優しいアロエさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

優しいアロエ

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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.0

〈オルコットへの敬意と現代的飛躍の両立〉

 冒頭、シアーシャ・ローナンがスクリーンいっぱいに左右へと駆け抜けていく。『フランシス・ハ』の如きその姿に「あぁ、これはグレタ・ガーウィグの作品なのだ」と実
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若草物語(1994年製作の映画)

3.5

〈『若草物語』を知ろう その2〉

 オルコットの『若草物語』4部作のうち初めの2作品をまとめており、つまりは49年版とほぼ全く同じストーリーを辿る。

 リメイクする意義はさして感じられなかったが、
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若草物語(1949年製作の映画)

3.4

〈『若草物語』を知ろう その1〉

 「夢」に生きるか「現実」に生きるか。男性以上に女性が抱えてきたとも云えるこの葛藤を、南北戦争時代の4姉妹に分散させるように描いたのが、この『若草物語』だ。

 犯
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マルコムX(1992年製作の映画)

3.6

〈ある者は白人との融和を、ある者は白人との隔絶を唱えた〉

 キング牧師とともに黒人解放の指導者として知られるマルコムX。しかし、キング牧師の「融和主義」に対し、マルコムXの「分離主義」は白人への強い
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モ’・ベター・ブルース(1990年製作の映画)

3.8

〈ジャズと浮気と借金の交錯する、ニューヨーク・インディーズの快作〉

 ブルックリンで活動するトランペット奏者とそのジャス仲間とマネージャーの紛糾を描く。政治的テーマが本作では抑揚され、代わりに通俗的
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スクール・デイズ(1988年製作の映画)

3.8

〈黒人の覚醒を声高に叫ぶスパイク・リーの『青春群像』〉

 スパイク・リーのかつての記憶と思しき学生たちの狂熱を呼び起こしつつ、学内組織の二項対立を描く。この二項対立とは、①黒人固有の文化やルーツに誇
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スリ(掏摸)(1959年製作の映画)

4.6

〈パリの街を蠢くブレッソンの「手」〉

 「手」で語るブレッソンの美学が脱獄劇『抵抗』に続いて、スリ(掏摸)とも抜群の絡みを見せたのは当然のことだろう。

 スリを企てた主人公たちの「手」が、あたかも
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抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956年製作の映画)

4.8

〈作ってわくわく♪抜け出してわくわく♪〉

 手元に焦点を定め、事象を淡々と書き留めていくブレッソンの映像美学は、「手口」を観察することに醍醐味のある脱獄劇と驚異の相性をみせる。扉の溝をほじくるだけで
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田舎司祭の日記(1950年製作の映画)

3.4

 忠実な目にだけは定評のあるらしいイレイザーヘッド似の若手司祭が、田舎の教区を訪れ、不信心に蝕まれていく。小さな空間でキリスト信仰に苦悶するあたり、『冬の光』などベルイマンの作風を思わせる一本。

 
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ラルジャン(1983年製作の映画)

4.6

〈人の手を渡り、悪意と不条理を撒き散らす横長のジョーカー〉

 一枚の偽札からはじまった悪意と不条理の連鎖を「結果」に絞って書き留めていくミニマリズムの極致。説明も排除、感情も排除。そんなブレッソンの
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

3.6

〈緊急事態を飄々と成敗していく、自粛明けにこそ観るべきジャムおじさんの新作〉

 よく考えればゾンビたちは「三密」と「濃厚接触」の掟を破って「感染」を広げる存在なのだが、ゾンビを見てそんな懸念を抱く人
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凱里ブルース(2015年製作の映画)

3.8

〈でたらめな時計と緑がかった暖色が誘う、ビー・ガンの時間旅行〉

 ポン・ジュノに認められた男ビー・ガンが自身の故郷・凱里へと誘う、過去と現在の混濁した旅。後半60分における怒涛の3Dワンカット撮影を
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バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)

4.3

〈涙を流し、訴える者。すべてを荷い、受ける者〉

 初ロベール・ブレッソンだったので緊張したが、なかなかよい滑り出しとなって安心した。やっぱり映画監督との初対面はその後のモチベに大きく関わるからドキド
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狼の時刻(1966年製作の映画)

4.2

「長く連れ添った夫婦は考えも容姿も似てくるのよ」

 芸術家ゆえの苦悩と女性の幻影に悶え、虚構へと堕ちていくベルイマンの自己昇華的作品。フェリーニの『8 1/2』は『野いちご』に影響を受けたことで知ら
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フェリーニのローマ(1972年製作の映画)

3.8

〈美醜入り混じるローマの今昔を鮮烈な色彩で描きつなぐ一枚壁画〉

 ローマに憧れ、活動の拠点にしてきたフェリーニが自ら語り部を務めた渾身の映像証言。街そのものが主役であり、市井の人々は背景を飾る。そん
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炎628(1985年製作の映画)

5.0

〈阿鼻叫喚と歓声の混響に少年は耳を塞ぐ〉

 地獄だ。この世の地獄だ。Filmarksの平均点数が『アベンジャーズ/エンドゲーム』並に高いので以前から気になっていたのだが、その期待を優に上回る完成度と
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ディア・ハンター(1978年製作の映画)

4.2

〈戦争が変えたものを見よ〉

 若者に降りかかる戦争の不条理をロシアンルーレットに濃縮し、ベトナム戦争を見せずして見せた大作。檄とビンタの応酬によるパワハラ演出が現場の狂気を再現してしまった。

 ク
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コロンバス(2017年製作の映画)

4.2

〈答えを突き詰めた空間で、ふたりは別々の答えを模索する〉

 「モダニズム建築×小津安二郎」とかいうパワーフレーズで3月から話題であった、コゴナダ監督の長編デビュー作。機能的なモダニズム建築を誇るイン
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娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)

4.0

[はじめに]

 本日、2ヶ月ぶりに映画館に赴くことができた。まだまだ先行き不透明ではあるが、ようやくあの日常が戻ってきた感覚が少し得られた。(https://youtu.be/BfL5V3WHhqM
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プラトーン(1986年製作の映画)

3.8

〈極限の地、極限の精神たち〉

 苛烈な戦地で反目を極める現実主義と理想主義。その間で揺れる若兵士を追ったオリバー・ストーンの私小説的作品。イェール大学を中退しベトナム戦争に参加したストーンにとって、
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インランド・エンパイア(2006年製作の映画)

3.4

〈リンチが女優の闇にまた迫る〉

 『マルホランド・ドライブ』の延長戦というべき、くたびれた女優の底意地と淀んだ精神世界。デヴィッド・リンチは『サンセット大通り』をオールタイムベストに挙げていることで
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ストレイト・ストーリー(1999年製作の映画)

3.8

〈最期を見据え、人はなにをする?〉

 悪夢作家がお爺さんのロードムービーを撮ったということで『野いちご』みたいな作品を予想させておき、まんまと裏切る設計。

 これがデヴィッド・リンチらしからぬ平坦
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ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)

4.0

〈“つくられた”悪夢のはじまり〉

 2部構成、別人への転移、一人二役のヒロイン... 本作は『マルホランド・ドライブ』の骨形成的な作品であった!

 『ロスト・ハイウェイ』と『マルホランド・ドライブ
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砂の惑星(1984年製作の映画)

3.4

〈デヴィッド・リンチがいま熱い!〉

 カルトの帝王デヴィッド・リンチ。すでに映画製作から引退したはずのこの男の名を、最近やけにSNSや記事で見かけないだろうか??

 そこには、けっこう色々な理由が
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ワイルド・アット・ハート(1990年製作の映画)

3.6

〈鎮滅を省みず燃えさかる炎〉

 淀んだ現実から解放されるようにアメリカ荒野を逃避行する物語は、60年代末から反復されてきたアメリカンニューシネマの看板であるが、90年代にもなってくるとその反権的な姿
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イレイザーヘッド(1976年製作の映画)

4.2

〈雑音と白煙に満ちた悪夢の世界〉

 『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』から“妊娠させちゃった繋がり”でデヴィッド・リンチのフィルモグラフィーに飛んでみる。
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 いかにもインディーズ
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インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013年製作の映画)

4.0

〈名もなき者への鎮魂歌〉

 売れないフォークシンガーの最後の一週間。コーエン作品にしては珍しく犯罪が起きず、ジャームッシュのような寂しげな日常譚となっている。

 不器用な性格とこだわりの強さが邪魔
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バーン・アフター・リーディング(2008年製作の映画)

3.2

 ルベツキが代打に入った豪華キャストの犯罪コメディ。コーエン兄弟の傑作がなぜ傑作なのかを考えるカギになる対照実験的失敗作。バーンビフォアウォッチングだけは避けたい一品。

 まず、CIAとフィットネス
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バーバー(2001年製作の映画)

4.2

〈しがない理髪師の色褪せた人生〉

 “繰り返し”を以て構築される私たちの人生。本作『バーバー』は、「それでも道を逸れるよりはマシよね...」と単調な日々をため息まじりに肯定した『ファーゴ』の延長戦で
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ミラーズ・クロッシング(1990年製作の映画)

3.8

〈コーエン兄弟は堅実なマフィア映画を撮っていた〉

 禁酒法時代のイタリア系とアイリッシュ系のギャング抗争。ドンが子分の訴えを聴くオープニングや開いたドア越しのカットが『ゴッドファーザー』を悪戯に想起
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オー・ブラザー!(2000年製作の映画)

4.1

【過去鑑賞作品 80】

 カントリーソングとアメリカの原風景的な画作りが心地いい暖色のコメディ。マイクに顔を突き出すように歌う間抜けなトリオが鶏のように見えてくる(鶏顔がふたりもいるのだから当然か)
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ノーカントリー(2007年製作の映画)

4.6

【過去鑑賞作品 79】

〈アントン・シガーは神ではなかった〉

 屠殺用空気銃の“ピュン”という音の数だけ死体とドアノブの山が積み重なっていくコーエン兄弟のアカデミー作品賞受賞作。淡々とした「殺し」
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ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)

4.4

【過去鑑賞作品 78】

〈やけに呼び名に固執する、のんべんだらりの中年ヒーロー〉

 信者によってリボウスキ・フェスティバルなるものが毎年催され、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でもオマージュされた
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赤ちゃん泥棒(1987年製作の映画)

4.1

〈赤ちゃんかわいすぎ✨〉

 悪転していく大人たちの珍騒動をこの映画で最もまともな人間〈赤ちゃん〉の目線から「滑稽バブ〜」と笑い飛ばす、コーエン兄弟ハリウッド進出作。

 クドめのコメディは本来苦手な
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ブラッドシンプル ザ・スリラー(1999年製作の映画)

4.3

〈一寸先すら全く読めぬ80年代テキサスの闇〉

 コーエン兄弟のデビュー作品(のディレクターズ・カット版)にふさわしい泥沼化クライムスリラー。『ファーゴ』と対照的なのは、妙に熱気がムンムンとしたテキサ
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トゥルー・ロマンス(1993年製作の映画)

3.8

〈トニスコの人情迸るオタク青年の白日夢〉

 「犯罪バカップルの逃避行」と来れば、シネフィル入門者は真っ先にアメリカンニューシネマを連想するのだが、その代表格『俺たちに明日はない』『地獄の逃避行』など
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