蛸さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

パディントン(2014年製作の映画)

4.3

まず、この映画に満ち満ちているであろう幸福感を予感させる見事なオープニングが観客の心を掴む。

とてもユーモラスで、ステキな演出(シームレスで幻想的な回想シーン、フリ/オチの効いたコミカルなやりとり)
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るろうに剣心(2012年製作の映画)

3.6

アクションのクオリティは高いけれど、平場での何気ないやりとりの演出とかがすごく稚拙…というかカッコ悪い…というか……

2時間超えの尺もあって間延びした印象も強かった。
でも殺陣は凄いです。

21ブリッジ(2019年製作の映画)

4.1

映画はとある警察官の葬儀から始まり、そこでは息子である少年(=主人公)が静かに一筋の涙を流している。
舞台は飛んで19年後、内務監査官からの聴取に応じる刑事になった主人公の姿が描かれる。どうやら彼は、
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フランケンシュタインの復活(1939年製作の映画)

4.5

言わずと知れた、ボリス・カーロフが(最早アイコン的な)「怪物」役を演じるフランケンシュタイントリロジーの最終作。
前作、前々作と比べると知名度が低い印象の本作ですが、殊ヴィジュアルという側面に関して言
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JUNK HEAD(2017年製作の映画)

4.3

まず、弐瓶勉×シュヴァンクマイエルとでも言えそうな広大で閉塞感溢れる世界観とそれを表現する美術が素晴らしい。
その上で、魅力的なキャラクターたちのユーモラスなやりとり、エンタメとしての勘所を抑えた展開
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ノマドランド(2020年製作の映画)

4.1

社会の周縁で彷徨い続ける「ノマド」という生き方を選択した、初老の女性主人公の生活を、ドキュメンタリー的タッチで淡々と提示していく、極めてストイックな印象の映画。
主人公は、時に同じ境遇の人間たちと繋が
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シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

4.0

元々「私小説」的だったテレビシリーズが新劇場版になって「私」的な部分を振り払い始めたと思ったらやっぱり「私小説」的になっていって、最終的にエヴァというシリーズを追い続けてきた「私(達)小説」的な展開で>>続きを読む

ザ・ブルード/怒りのメタファー(1979年製作の映画)

4.1

サイコ/オカルトホラーとして、割とありがちな話ではあるんだけど、物語上のカギとなる表現の身も蓋もなさが印象的な一本。

「感情が具現化する」というアイデアを、映像化する時にここまで具体的にやってしまう
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クラッシュ 4K無修正版(1996年製作の映画)

4.5

自動車のエンブレムのように艶かしく輝くスタッフクレジットがハワード・ショアの極めて官能的な劇伴とともに流れていくオープニングタイトルが、この映画が性愛についての映画であることを宣言しているかのようです>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.2

あまりにも偶然に出会い、共通の趣味を通して仲を深めたカップルの恋愛と、その別れまでを小気味良いモノローグと共にテンポよく描き切った快作。

共通点をきっかけに(同じ世界を見ていることをきっかけに)、そ
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ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

4.1

1999年、2005年、2019年。それぞれに異なる三つの時代を、同じ「煙」というモチーフが流れていく。
それは、煙草の煙であり、葬式の焼香の煙であり、あるいは工場から上がる排煙であり、食卓を漂う湯気
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ガメラ2 レギオン襲来(1996年製作の映画)

4.5

前作の方法論をそのまま踏襲し、その上で更なるクオリティアップに成功しているシリーズ2作目。
2作目であることの利点を活かして、いきなり物語の本題に入っていくオープニング。そこからラストシーンに至るまで
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ニュー・ミュータント(2020年製作の映画)

3.8

閉鎖された謎の施設に集められた5人のミュータントの少年少女がそれぞれのトラウマと闘う、20世紀FOX版X-MENの現時点での最終作。

まだ自身の能力を制御しきれていない思春期のミュータントたちに焦点
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水の中のナイフ(1962年製作の映画)

4.4

ヨットの上という限定された空間において展開される非常にミニマムな映画。登場人物も、年配の夫婦とヒッチハイカーの青年の3人しか存在しない。

ドラマは、彼らの間に存在する様々な対立を燃料にして進んでいく
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プラットフォーム(2019年製作の映画)

4.0

状況設定のアイデア一本勝負で突き進むタイプのシチュエーションスリラー。

主人公たちが生活している「穴」の構造は、まあ…現代の社会の格差を象徴するもので…とか言うのも馬鹿らしくなるくらいわかりやすく社
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緋色の街/スカーレット・ストリート(1945年製作の映画)

4.5

しがないサラリーマンが若い女性に夢中になり破滅していく、というフィルム・ノワールの典型的な作品。
主要キャストを同じくする『飾窓の女』の語り直し的な趣のある作品だが、こちらの方が悪夢的な演出が冴え渡っ
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魔人ドラキュラ(1931年製作の映画)

4.0

1931年公開作とあって、まだまだサイレント映画的な演出が全体に渡って支配的。単純にオープニングタイトルで流れる「白鳥の湖」以外に劇伴が存在しない点、SEを効果的に使用したシーンの不在などがその印象を>>続きを読む

スカイスクレイパー(2018年製作の映画)

4.0

『ダイハード』と『タワーリングインフェルノ』をロック様主演でやってみた、というような、正直それほど志の高くはない映画ながら、幾度も繰り返される「高所から落ちるか/落ちないか」のサスペンスが持つ人間の生>>続きを読む

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)

4.4

怪獣映画として、高く設定したリアリティラインを丁寧な演出の積み重ねで実現している素晴らしいシリーズの一作目。

序盤ではドラマが、人々がギャオスの存在を追いかけるパートとガメラの存在を追いかけるパート
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ヒックとドラゴン2(2014年製作の映画)

3.8

「優しさ」は「強さ」に勝るという前作の精神を失った凡庸な続編。 

今作では、主人公ヒックが父親の跡を継ぎ、村の長に収まるかどうかという点が物語の主軸となっているが、その主軸に物語上の敵役=ドラコが有
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ハッピー・デス・デイ 2U(2019年製作の映画)

3.9

一作目と比べるとコメディ色、ドラマ色が強い。ホラー映画としての要素がほとんどなくなってしまったので少し緊迫感にかける印象。
あと量子力学をドラマに都合よく使いすぎでは?と思った。まあループや並行世界の
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ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

4.1

主人公のツリーはホラー映画だったら真っ先に殺されそうなタイプの女性。悪く言えばアバズレです。
今作は、彼女が何者かに殺されてしまう1日を繰り返すといういわゆるループモノの映画です。
ループモノに期待さ
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砂の女(1964年製作の映画)

4.7

冒頭のスタッフロール(スタッフの名前とともにその印影が配置された)から、とにかく映像が素晴らしい作品。
映像のソリッドな質感、エッジの効いた前衛写真のような構図に最後まで痺れさせられた。
「砂」という
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パパとムスメの7日間(2018年製作の映画)

3.5

日本で昔やってた新垣結衣主演ドラマのベトナム版リメイク。
入れ替わりコメディとしての面白さもあり、お話もしっかりしているのだけれど、美術や映像がとてもCM的(広告代理店的)。
色々と綺麗にできすぎてい
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解放区(2014年製作の映画)

3.6

職場を失い、「何か」を求めて西成区へやってきたドキュメンタリー作家志望の主人公がズルズルと転落していく姿を描いた作品。西成区はあくまでも舞台であってメインの題材というような扱われ方をしていない。
それ
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T-34 レジェンド・オブ・ウォー(2018年製作の映画)

4.4

「荒唐無稽」という概念がそのまま映画になったような作品です。
戦車映画というと近年では『フューリー』が思い出されますが、こちらは70年代戦争アクション映画のようなハッタリと男臭さに塗れた作品です。
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名もなき野良犬の輪舞(2016年製作の映画)

4.2

ノワールとしてお話の完成度が高く、演出や音楽なども一級品。
その上であの主役2人の関係性……これは見る人が見たら堪らんものがあるんじゃないでしょうか。
ブロマンスを通り越してほとんどBLみたいになって
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桃源郷ラビリンス(2019年製作の映画)

1.8

岡山市に住んでいたことがある人は楽しめるのではないでしょうか?

ジョーカー(2019年製作の映画)

4.1

物語のヴィランはヒーローとの対比の中でその魅力を際立たせます。ヒーローがありとあらゆるルールでがんじがらめなのに対して、ヴィランは自由。我々ができないことを平然とやってのけるヴィランに観客は魅了される>>続きを読む

ヒックとドラゴン(2010年製作の映画)

4.5

ドラゴンと敵対するヴァイキングたちの島を舞台にした少年ヒックの成長物語。

ヴァイキングたちの間ではドラゴンを殺すことが名誉と結びついている。そこでは誰もがドラゴンを殺して、名を上げようとする。
映画
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ドクター・スリープ(2019年製作の映画)

4.2

歴史的名作である前作を(主人公が)超克すべきトラウマとして設定してあるのが上手い。そのためクライマックス以降の前作ファンへの目配せが、自然なものとして見ていられる。

個人的にはそこに至るまでの超能力
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スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019年製作の映画)

3.4

一度壊れたものを無理に元に戻そうとしたのなら、歪なものが出来上がるのは当然のことだと思います。さながら劇中でのカイロレンのマスクのように。

鑑賞中、驚くほど冷静にスクリーンの上の出来事を眺めている自
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ジュマンジ/ネクスト・レベル(2019年製作の映画)

4.0

前作の鮮やかな出来に比べると、嫌でも2作目特有の二番煎じ感とそれに伴う動機の薄さや軽率さが目についてしまう。
それでも軸となる老人2人の友情のドラマはしっかりしていて、細かい伏線回収も相変わらず巧み。
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BOYS/ボーイズ(2014年製作の映画)

4.3

まだ未熟で不安定な10代の少年の同性に対する恋を描いた青春映画。
冒頭から瑞々しい映像と環境音が目と耳に心地いい。

全体を通してセリフは少なく、主人公の複雑な内面の機微を映像で語る演出がとても巧み。
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ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!(2018年製作の映画)

4.3

フィンランドの田舎町で冴えない日々を送るメタル青年たちの青春コメディ(ロード)ムービー。

題材から予想される印象とは違ってかなりのんびりした展開の映画。特に映画全体の3分の2を占める、田舎町でのあれ
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