酢さんの映画レビュー・感想・評価

酢

101匹わんちゃん(1961年製作の映画)

3.3

この時期のディズニー作品はイラストレーションのような筆致の背景美術が眼福。ウットリしながら見届けました。あと熊倉一雄と山田康雄の泥棒コンビが絶品。納谷六朗は超美声。

不滅の物語 オーソン・ウェルズ(1968年製作の映画)

3.5

オーソン・ウェルズのフィルモグラフィーからすると慎ましい小品なのかもしれないけど、なかなか私は好きだなあ。

マカオを舞台に展開される奇妙な小噺。抑揚を廃した囁くような台詞回し。ナレーションを多用する
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危険なめぐり逢い(1975年製作の映画)

4.0

燻んだ灰色の結晶体のような映画で大好き🩶🤍誰が何を考えていて物語がどこに向かって動いているのかよくわからない宙吊り状態がデフォルトの後期ルネ・クレマン節がまず私の好物なのだけど、更にひと段階上のレベル>>続きを読む

私をくいとめて(2020年製作の映画)

3.3

友人に勧められたシリーズ。
これだけ長い上映時間をかけて今ドキ女子のお悩みを開陳するのみなのでまどろっこしい語りなのにも程があるのだが、映画の根底に流れる「一人がラクだけどそれだけだと寂しい/大切な人
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逃げる天使(1994年製作の映画)

3.3

デニス・ホッパーは監督作品を見るたびに「マジでスケベなオッサンだったんだろうな」としみじみ思う。今回もエリカ・エレニアックにダボシャツ着せたり脱がせたりおっぱい出させたりと手練手管のスケベ術炸裂。一方>>続きを読む

恐怖の火あぶり(1979年製作の映画)

3.3

虐待家庭で育ったブルーカラーのモテない精神疾患持ちが犯罪に走る。どこぞの名画座で「弱者男性映画特集」を組む時には必ず選んでほしい一本だなあと思いつつ見た。女とのぎこちない距離感、服屋の店員に言われるが>>続きを読む

雨の訪問者(1970年製作の映画)

3.3

曖昧模糊な物語から人々の想いが陽炎のように浮かび上がる。好き。もっと謎めいてくれ、もっと戸惑わせてくれ!と心の中で喝采を叫びながら最後まで画面に齧り付いてしまった(ただ試みとして成功しているかと言うと>>続きを読む

狼は天使の匂い(1972年製作の映画)

3.5

「映画っちゅうのは雰囲気なんや!」ってことですか、ルネ・クレマン先生。たしかに冒頭のルイス・キャロルの引用からして雰囲気があり過ぎる。そしてユルい犯罪計画の中には謎めいたフラッシュバックと「男は永遠に>>続きを読む

シランクス(1965年製作の映画)

3.3

元ネタのギリシャ神話を知らないと何が何やらだけど、踏まえて臨めば「こう表現するのね〜」と面白がれる。記号的な表現やモンタージュが廃されることで、解釈を交えず神話の「雰囲気」だけが抽出されて提示されたよ>>続きを読む

天使ガブリエルと鵞鳥夫人(1964年製作の映画)

3.3

風刺したさが迸りまくってますね、イジー・トルンカさん。説教を垂れる神父は性欲を抑えられない俗物、思考停止で安易な信仰に走る大衆は馬鹿。シニカルすぎるような気もしつつ、ぎりぎりコミカルで笑える仕上がりに>>続きを読む

プロメテウスの庭(1988年製作の映画)

3.3

生成と消滅が繰り返されまくる異常なイメージが楽しくてキャッキャしちゃう。しかしブルース・ビックフォードがアウトサイダーど真ん中の狂人なのかと言うと、作品内にそれなりに構成があったり、文明批判のような要>>続きを読む

麗猫伝説 劇場版(1998年製作の映画)

3.3

「映画愛」をタテにデタラメ表現の限りを尽くす大林宣彦の厚顔無恥ぷりには心底うんざりするが、特定のジャンル分けを拒否する猛々しいセンチメンタルさは楽しめた。入江たか子は本当に大女優なのに絶妙に偽物っぽく>>続きを読む

おいしい結婚(1991年製作の映画)

4.0

これまた傑作。森田芳光が『秋日和』を換骨奪胎すると、今ドキの若者向け結婚HowTo講座になるのね。基本的に登場人物がみんな人間らしい嫌らしさと愛嬌を併せ持っていて、段々愛おしく、そしてずっと眺めていた>>続きを読む

チンプイ エリさま活動大写真(1990年製作の映画)

3.3

そもそも『チンプイ』について全くの初見だったのだけど、世界観全てがキュートでめっちゃ良いね👍主役のエリちゃんがガサツズボラ系で声が林原めぐみなの最高。チンプイもワンダユウもぬいぐるみみたいな見た目とゆ>>続きを読む

エンティティー/霊体(1982年製作の映画)

3.5

マーティン・スコセッシおすすめ作品なだけあって、なかなか一筋縄でいかないスタイルで作られていて面白い。ただし「純然たるホラー」を期待すると少し肩透かしかも。

今作の見せ場の一つは間違いなく「目に見え
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眠れぬ夜の仕事図鑑(2011年製作の映画)

3.3

夜に仕事をする人々を淡々と追うドキュメンタリー。テロップやナレーション等の解説一切なしのストロングスタイルなので、面白いかどうかはこの監督特有の被写体に歩み寄らないドライな距離感を楽しめるかにかかって>>続きを読む

未来の想い出 Last Christmas(1992年製作の映画)

4.0

森田芳光、お前真っ当な映画撮れたんだな。デフォルメされた人間描写も、凝った映像表現も、細部のお遊びも、当たり外れのデカい森田節が藤子・F・不二雄の少し不思議作風と相乗効果で完全に功を奏している。棒読み>>続きを読む

間諜X27(1931年製作の映画)

3.3

虚無顔が美しい未亡人娼婦のマレーネ・ディートリヒが敏腕スパイになって敵国兵と恋に落ちるも一人の女としての矜持を失わずに堂々と処刑される様を優雅な映像美の中で描いてやるぜ〜!……って欲張りが過ぎる。理想>>続きを読む

スペイン狂想曲(1934年製作の映画)

3.5

小悪魔マレーネ・ディードリッヒのファッションショーを楽しめば良し。登場のたびに必ず衣装が変わる凝りっぷりが神🎉 お初にお目にかかります、名匠ジョゼフ・フォン・スタンバーグ作品。カーニバルに沸くスペイン>>続きを読む

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)

3.3

【前提】
種と種死に関して、Wiki知識すらない全くの初見。当然、その他の福田己津央作品は見たことなし。でもガンダムは富野由悠季作品だけ履修済み。

【感想】
当時のファンに向けて作られた一見さんお断
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菊池エリ 巨乳(1986年製作の映画)

3.5

全く直撃世代ではないけど可愛いね菊池エリ。困り眉と豊満ボディのコントラストがたまりませんなー。細山智明ならではの奇天烈映像マジックは今作は控えめで、業界ならではの男女のすれ違いを手堅く描く。これがまた>>続きを読む

傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)

3.3

【前提】
・原作未読。
・3部作は公開当時に見た。内容は朧げにだけど覚えている。

【感想(簡潔)】
3部作より構成がシャープになっていて、「映画として」も「物語として」も意図が鮮明に打ち出されている
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ウィッシュ(2023年製作の映画)

3.0

原作なしオリジナル作品だからかもしれんけど、導入から怒涛の説明台詞で萎え。あとは全体通して100周年記念仕様。過去のディズニー作品からつぎはぎしながら作りました感が強くて個性に欠ける。その上で昨今ホッ>>続きを読む

下郎の首(1955年製作の映画)

3.3

下郎が下郎に生まれついたことに端を発する、回避不可避な悲劇。田崎潤の忠義一途なカタブツっぷりが可笑しくて、だからこそ社会の理の中で死に至ってしまう道程が無情に浮かび上がる。

悪について考えさせられた
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エースをねらえ! 劇場版(1979年製作の映画)

4.0

全編を貫く強烈な人間愛が清々しい。岡ひろみも宗方コーチもお蝶夫人もそれぞれの人生を全うして青春を燃やしていて、そこには善悪の区別も段取り的な対立も存在しない。しかもそれが出崎統のハイテンション演出で8>>続きを読む

インフェルノ 蹂躙(1997年製作の映画)

3.3

キチガイカップルに狙われて大変なことになる楽しさを過不足なく味わえる。定期的に気味の悪い描写を挟んで油断させない抜かりなさも込みで、良心に満ちたウェルメイドな作りだと言えると思う。

その上で、高橋洋
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ザ・スタッフ(1985年製作の映画)

3.3

新年なので景気が良さそうなものを。
馬鹿にされてナンボなアホアホB級ホラーかと思いきや、設定がカジュアルなだけでめちゃくちゃきちんと撮ってるから驚いた。脚本はグダらず、特撮は心地よい外連味でサービス精
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窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

3.3

やたら評判良いんで見てきた。トットちゃんの脳内を表現するイメージシーンで画風をガラッと変える試みが効いてますな。反戦メッセージもありがちパターンに陥らず、子どもの目に映る世界の中で描いていく。野暮な泣>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.3

なんちゅう危ない映画。
病んだ氷河期世代のおじさんが見たら歓喜の涙を流しそう。負けた上に死に場所を無くしで無力感MAXな男の皆さんによる渾身のドブさらい。国は信用ならねえけど俺たちのど根性だけで勝って
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今朝の秋(1987年製作の映画)

4.0

問答無用の名作。
家族なんて所詮は吹けば飛ぶ他人の寄せ集め。なのに一人で生きることはあまりに心細い。人間模様を腰を据えて描く山田太一脚本。物語の駒でなく清濁併せ持った人間としてそこに現れる手練れの俳優
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冬構え(1985年製作の映画)

3.3

笠智衆と往く湯煙ロードムービー。笠智衆の抱える絶望が根本的に解決不可能なので、どうするの山田太一と思って見守っていると……。

映画は監督のもの、テレビドラマは脚本と俳優のもの。前作に続き俳優ファース
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宇宙大怪獣ドゴラ(1964年製作の映画)

3.5

映画全体としては「東宝特撮映画黄金期テイストをAIに作らせてみました」っぽさがある。それは脚本・関沢新一の目指す二転三転するスパイ活劇と、監督・本多猪四郎の品行方正な演出がまあ噛み合ってないという意味>>続きを読む

ながらえば(1982年製作の映画)

3.3

兎にも角にも笠智衆。山田太一脚本は笠智衆とタッグを組むにあたって綿密に戦略を立てている。笠智衆なら物語が本格始動するまで台詞なしでも存在感で十分に持つ。周囲の登場人物たちの台詞で舞台設定が立ち上がりさ>>続きを読む

婦系図(おんなけいず)(1962年製作の映画)

3.5

三隅研次の面白さってなんなんだろうと考えながら見た。全く上手く言えないけど、三隅は「空間」で物事を捉えていると思う。対象Aも対象Bも音も光も、全て同じ空間にある。その前提から出発している。だから距離が>>続きを読む

アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

4.0

全てが岡田麿里過ぎて悶絶&爆笑しながら観ていたが、クリシェを破壊して駆動する凶暴なエモーションと痛みも我儘も全肯定なパッションを前にただひれ伏すしかなくなった。巧拙の枠を超えたタガの外れっぷりは尊敬に>>続きを読む

女ざかり(1994年製作の映画)

4.0

常人の監督ならとっ散らかって爆死しているだろう企画を、自分の表現の土俵に持ち込んで制しきる大林宣彦の剛腕さには舌を巻く。原作未読だけど多分ガン無視なんじゃないの。日常風景の中に異界を現出させまくり、性>>続きを読む

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