酒もタバコもやらないし、違法薬物は許されない、その代替物として映画の過剰摂取をやめられない。夢うつつへのトリップ。本質的に幻覚的である、まばゆい閃光の明滅と音楽の快楽性が、おしなべて少なからずドラッグ>>続きを読む
流行りのフェミニズムホラーを起点に、二転三転、先の展開がまるで読めない巧みな語り口。不吉な不協和音が神経を逆なで、気の休まることのない緊張感を持続する。不穏が恐怖へとそのおぞましい正体を露わにするとき>>続きを読む
吹雪に閉ざされた山小屋の惨事といえば『ヘイトフル・エイト 』を思い浮かべもするが、あのようなリッチな映画体験でなくとも、自宅で、配信ムービーで、あるいはもしかしたらタブレットでも同等のスリルと興奮を味>>続きを読む
真の勝利はゲームを勝ち抜くことではなく、この理不尽なゲームから降りる、または破壊することにある。二作を通して顕在化するYA的世界観に、全米ローカルヒットの文脈を読む。
通常版とエクステンデッド版でエ>>続きを読む
ソウ×キューブ的なデスゲームからゴアを廃した、よい子に優しいリアル脱出ゲーム。ストーリーを語るわけでもなく、謎解きの快感に全振りするライド型エンターテインメントの一種。佐藤健とノブのコンビで見たいやつ>>続きを読む
ジーンズが人を襲うなんてZ級のワンアイデアにもかかわらず、ルックは安っぽくないし、怖いシーンはしっかり怖くて感心する。もちろん笑える、あるいは失笑のホラーコメディである。スプラッターにはユーモアが溢れ>>続きを読む
生きるために殺す。人が生き抜くための業に迫られた殺生ゆえに、血を流す全ての生き物たちへの畏怖が、ソリッドなアクションに、痛みを感じさせる必然的な残酷表現に描かれる。美しく。ネイティブ・アメリカンのヒロ>>続きを読む
“秩序”ある社会の名の下に、日陰に追いやられる者たちが縋る「物語」への信仰。たとえ妄想と罵られようとも、虚構に見出す真実にこそ自らの存在理由を託す。
『スプリット』に次ぐまさかの続編に『アンブレイカ>>続きを読む
イルミネーションマナーがその対象年齢の子供たちを存分に笑顔にする傍らで、大人の観客こそノスタルジーに歓喜、むせび泣く最高のファミリームービー。誰もが一度はプレイしたことのあるマリオワールドが眼前に広が>>続きを読む
『ブレードランナー』を思い起こす雨と光のレイヤーに、ルトガー・ハウアーのカリスマが浮かび上がる。凶悪かつ純粋な狂気に引きずり込まれる恐怖のデス・ロード。無人のハイウェイに砂漠の荒野を想起すれば、マッド>>続きを読む
ディズニー非公認のゲリラ撮影という触れ込みをもってして、カルトムービーになり損ねた本作もまたB級映画の有象無象。リンチやノーランやダーレン・アロノフスキーのようにはなり得なかった男の、卑俗な妄想に付き>>続きを読む
キャスティングの妙。ありきたりなジャンル映画のB級プログラムを、レイフ・ファインズの品格とアニャ・テイラー=ジョイの眼差しがウェルメイドな一流コースメニューへと仕立てあげる。古典ミステリーのような深い>>続きを読む
大義に人生を捧げるか、否か。先人たちの葛藤を軽やかに止揚し、そのどちらでもない選択肢を生きようとする新世代ヒーローのあっぱれ。自己犠牲なる病から完全に解放されたかに見える明朗快活な青年と、愉快な仲間た>>続きを読む
『ロスト・ボディ』からの『ロスト・アイズ』。主演女優つながりで、共にスパニッシュ・スリラーの良作。
盲目のヒロインというある種の定型に加え、進行性の病に侵されていく不安感、閉塞感を画面の視野狭窄に表>>続きを読む
大義をかけた戦いに終止符が打たれることはなく、やはり正義が悪を真に打ち負かすことなどあり得ない。敵を滅ぼすことでしか勝利できないゲームのもとでは、闇に光を当て、光は影を落とす、その繰り返しでしかない。>>続きを読む
高所、閉所恐怖症的な圧迫感と何かしらのトラウマ的残像が呼び起こされる悪夢のワンシチュエーション。動悸、息切れ、この胸の高鳴りは吊り橋効果どころの騒ぎじゃ済まない、ヒコーキ墜落5秒前……。
おもしろ邦>>続きを読む
一夜の巻き込まれ型サスペンス、っていうか自ら巻き込まれていくスタイル。ゴアとロマンを詰め込んだ、映画オタクの悪夢的妄想。80sジャーロへの郷愁だとすれば、ギラギラ照明や音楽の意匠に限らず、恐怖がコメデ>>続きを読む
出しゃばるな。感情的になるな──。など、差別的なつもりでなくとも社会規範の如く内面化してしまってきた抑圧、女はかくあるべしという刷り込みをことごとく覆していくグランジガール。怪訝なまなざしを向ける群衆>>続きを読む
超ヘビー級のアベンジャーズ最終章を繋ぐ箸休めとして、実に小気味よくヘルシーなアクションコメディの“小品”。ミニミニ大作戦。正義を謳うがゆえの闘争もなく、親子愛を軸に誰も悪者にしない牧歌的かつ、ヒーロー>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
最大多数の利益のためなら、多少の犠牲はやむを得ない。救済の名を借り大量虐殺を正当化する。それも一つの正義、あわや“一理ある”と思わせかねない合理主義的なリアリティの化身。その普遍的かつ極めて同時代的な>>続きを読む
マーベル印のコメディタッチに輪をかけてオフビートなタイカ・ワイティティのギャグセンス、キャスト陣の内輪ノリに全くついていけず、ただ「移民の歌」がけたたましく鳴り響く神々の戯れを冷めた目で傍観する。
ト>>続きを読む
かくも人の命は軽く、サメは空を飛ぶ。CGは安っぽく、カットが前後で繋がらない云々はまるでエド・ウッド的な荒唐無稽(ちがうか)、しかしながら映画愛という事ですべては許されるべく現実逃避に興ずる。ついに来>>続きを読む
ジャパニーズケレンに溢れるスプラッターがシリアルキラーを経由し、オカルティックな怪物ホラーへと終着する珍作。
北村龍平のハリウッドデビュー作はクライヴ・バーカーの短編より。そのタイトルに偽りなき奇観>>続きを読む
ネオナチはゾンビのごとく。あるいはマッドマックス的終末世界にヒャッハーするならず者たちの暴動が、あの議会襲撃事件のそれと重なる。第一作のシチュエーションホラーより飛躍的にスケールを拡大し、およそ十年と>>続きを読む
本来、政府へと向かうべき不満をさらなる貧者、弱者に向けては自らの安泰を死守しようとする。怒りの声さえ懐柔され、権力に飼い慣らされた奴隷たちのサーカスを上流市民はせせら笑う。その搾取構造をあらわに、ブラ>>続きを読む
家族とて他人。他人同士、分かり合うことはないと割り切ろうにも、やはりどうしても諦め切れない親子、兄弟という特別な絆、あるいは呪縛。一人ぼっちよりも独りの孤独に苛まれる。聞いているようで何も聞こえていな>>続きを読む
「神の沈黙三部作」の最終編として括られるが、それはベルイマン作品に通底するテーマのようにも思える。愛を巡る欲望と理性の相克。神なき世界に彷徨う人間の悲劇を、光と影、音楽と沈黙の甘美なる調和に紡ぎ上げる>>続きを読む
強靭な人間愛に支えられたブラックユーモア、その聡明なる視座を持ちえない己の未熟さを認めざるをえない。脈略のない不条理劇をただただシュールと受け流すことしかできない見識の狭さ、人生経験の薄さを顧みると共>>続きを読む
ジャンプ的少年漫画のメソッドに加え、正義の闘争にアメコミ的ブロマンスを匂わせる、まさにサンプリング時代の決定版ともいえるバトルアニメの劇場版。「正しい死」へ向かう物語の前日譚。愛と呪いの、否、愛という>>続きを読む
原作の持つ“残酷性”をバイオレンスに振り切って再解釈し、大人の観客をも熱狂と笑いの渦に巻き込んだアクションエンターテインメントの続編としては、ややハートフルに寄りすぎる。新たにワイスピばりのケイパーア>>続きを読む
すべてを受け入れてこその愛。崇高で卑俗、愚かしくも美しい愛への確信が神の不在を埋め合わせる。空虚な死、つまり生のよすがとなる希望、信仰とは愛のことである──などと並べ立てる“芸術家”の言葉がそらぞらし>>続きを読む
配信スルーもさすがのエメリッヒ節は健在。常軌を逸したディザスター表現に格の違いを見せつけ、臆面もない『インデペンデンス・デイ』の二番煎じがこれまたちょうどいい塩梅の宇宙戦争を盛り上げる。新春、ハルマゲ>>続きを読む
他人を蹴落としてまで生き抜く未来にどれほどの価値があるのだろうかと。自ら死に場所を選べる幸福とその美学に映画的ハイライトを見てしまっては、ジェラルド・バトラーの奮闘も虚しく映る。
明日、隕石が落ちて地>>続きを読む
環境問題への警鐘が折しもMAGA批判に繋がる、2017年公開のアメリカ映画。温暖化の臨界点まであと少しの現実を思えば、何ら荒唐無稽とも言い切れないディザスターが迫る。
政治的解決など望み得ない故、科学>>続きを読む
てっきり『ルーム』のような監禁事件ものとして推移していくのかと身構えるも、まったくの思い違い。さながらX-MENシリーズのスピンオフとでも数えられるような、差別や迫害のテーマを下敷きにしたスーパーヒー>>続きを読む
天パでメガネのギーク少女に扮するマッケンナ・グレイスちゃんの、まさに“ギフテッド”な才能に魅了されっぱなし。流れっぱなしの劇伴からは、淡い80年代ジュブナイルへの郷愁を思わせる。男女逆転の大胆なアップ>>続きを読む