『シャーロック・ホームズ』シリーズを経て、臆面もなくやおいバディものを仕立てるようになったのは、個人の趣味が解放されているのか何なのか。マッチョな2人から滲み出る肉体的なエロス、否定できない。
それは>>続きを読む
しゃべる犬猫、しゃべる××に囲まれて。ヴィヴィッドなピンクを差し色に、なんてポップでキュートな倒錯者のヴィジョン。
従って、まともな人間の視界に垣間見る陰惨な光景への落差。
“I know you >>続きを読む
38年越しの続編と呼ぶには正統に欠ける。同一キャストで続投のミシェル・ピコリとパリの街が辛うじて『昼顔』の世界を思い出させる程で、38年後を別人が別人の視点を使って描いたスピンオフの趣き。
第三者たち>>続きを読む
「音楽には2種類ある
人が聴くか聴かないか
モーツァルトは前者
人が聴かない音楽といえば
深刻な“現代音楽”
真の現代音楽は
モーツァルトの和音に基づいている
ダリオ・モレノもビートルズもストーンズも>>続きを読む
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豪胆でイリーガルな男。ひ弱な優男にとってそれは天敵だ。
一度目を付けられると最後、主導権が返ってくることはない。彼のルールで事は進み、悪道へ引き込まれる。
うんざりしながらも断ち切れないのは、心の隅に>>続きを読む
感情亡き復讐劇。狂気に曝されたベトナム帰還兵に、帰る場所はない。
『タクシードライバー』のポール・シュレイダー脚本。
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冒頭から数分、主人公ソハを演じる俳優の顔を見極められず、話を見失いかけてしまった。というのは、ホロコーストの時代にユダヤ人を匿った男の、実話を基にした映画。その予備知識だけで観始めたものだから、まさか>>続きを読む
自意識の肥大と暴走について描いた『クロニクル』に引き続き、ギークの承認欲求にスポットを当てるジョシュ・トランクの作家性は明快。
それがスーパーヒーロー映画に巧く持ち込まれているかと言うと、別の話。>>続きを読む
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「チームに入らず自由であれ、自分のキャプテンになれ」
“他とは違う特別な私”にアイデンティティーを保ってきた。地道に歩を進めることを拒否し、社会の波を泳ぐように生きてきた。見たくないものは見ないように>>続きを読む
ホテルで働き始めた若い女、同僚の冷たい視線、裏手に広がる雑木林と魔女の伝説、そして失踪した元従業員の謎。これらを配置し、ミヒャエル・ハネケを彷彿とするとも言えなくもない(実際には直接的な影響下にあった>>続きを読む
女性作家ジェシカ・ハウスナーのズームを多用するカメラは、人物の言動を追うように動き、あくまで傍観者の立場を譲らない。
鬱屈した思春期を過ごすリタの表情も多くは語らず、出来事が淡々と映し出されていく。>>続きを読む
暗闇に漂うゾンビの影……まさかのジャンルチェンジではじまる笑撃の冒頭。
当然、人も走ればゾンビも走る。
その後登場するクリーチャーは、なかなか気持ち悪くて良い。
ただ、YA映画の体裁を保つ限り、例えば>>続きを読む
「共に生きるか、共に死ぬか」のような二者択一を迫る男の言う愛も愛のうち。与えず、奪うだけの愛。
日本映画界が失った才能、今敏が脚本で参加している『彼女の想いで』は、アイデアの所在は正確に判断できないものの、記憶と現実が入り混じる世界観と、映画オマージュは彼のタッチ。『惑星ソラリス』は無関係ではな>>続きを読む
自覚的に役を演じることは誰かのためであり、居場所を獲得することでもある。己を知ることは、一つ成長すること。とは、本シリーズの原点。
ホラー映画の雛型をガイドに、セルフパロディの趣きで本シリーズのエッセンスを申し分なく詰め込んだ20分の中編。
今作の主人公ジェシーの克服すべきトラウマが閉所恐怖症という人間味もいい塩梅。
何より、今作>>続きを読む
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ほぼ全編にわたるフィックス、からのパン、ズームインといった無機的なカメラワークは、祈りという人間特有の現象への観察、記録映像のようなドキュメント性を感じさせる。
主観を極力排除した俯瞰の構成は、あるい>>続きを読む
今作以来、ミシェル・ゴンドリーによる“恋愛妄想のすすめ”が、核心に触れ続けている。映画を観る理由だ。
願わくば、復習編ではなく予習編としてご教示願いたいものだ。
恋の痛みを知るすべての人へ……では手遅>>続きを読む
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フランス映画において、はぐれ者が行き着く先は海だと相場が決まっている。
浜辺で食堂を始めるために、廃屋を修築中の二人と一人と、もう二人。
妻に裏切られた夫と、母に捨てられた息子、家族に捨てられた老婆>>続きを読む
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“母親への愛は無意識であり 親離れの時 初めてその根の深さを知る”
神かブッダかは分からないけれど、僕はその存在を信じている。
親と子の神話を信じている。
だけど、そのファンタジーを望めば望むほど、母>>続きを読む
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孤独な少年はただ仲間が欲しかったんだ……
って思っちゃったわ、ラストのラストまで。
どんでん返し返し。
少年の成長譚と、それを裏切る納得の結末を用意しておきながら、さらなる反転。
“人は見たいものしか>>続きを読む
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『ミクロの決死圏』をはじめとする、人体極小化系サイエンスフィクションの系譜には欠かせない神秘性。今作は、原子以下の禁断の領域として、時空の概念を排する量子の世界を用意している。
キュアーが流れるバト>>続きを読む
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狙いが鹿でさえ弓矢を持つ手が震える文明人が、やがて、人を相手に命を奪う一矢を放つ。
死の淵に立ってやっと呼び起こされる野性。
崖を登るという、そのまま物理的な比喩に加え、舞台は渓流。ところにより流れは>>続きを読む
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シュルレアリスト、ルイス・ブニュエルの描く淫夢。
妻は夢を見る。
フロイトによれば、夢は無意識下に抑圧された願望であり、延いては根源的な、つまり性愛における欲求の不満に繋がるものとされる。
夢と現実>>続きを読む
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詐欺は、より高みから人を見下し操る。
しかし、彼ら三人のグリフターズ(イカサマ師たち)は、自らをも欺き続けることでやっとその高次に立つことができる人間たち。
偽りの仮面を脱ぎ捨てられるか、“雷に打たれ>>続きを読む
まるで意思を持つように生き生きと動くカメラの雄弁なこと。
画面が捉える視線の交差が、この映画の語りだ。
傍らで、潮騒、雨風の音にはじまり、車や列車の走行音が断続的に鳴り響く。
フレンチ・ノワールの名>>続きを読む
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その女は、大きな瞳でじっと世界を見つめていた。
確かな真実を。ハリウッド映画に涙を流した。
大きなうねりの中心へと誘われ、やがて飲み込まれてしまっても、心までもを奪われることはなかった。
女は女優だっ>>続きを読む
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俗世から逸れた者は、自らの内に≪聖域≫を囲う。
そこへの道筋を知る者は、≪秘密の権力≫を握る己のみ。不可侵に守られた最後の砦。
辿り着いてしまってはならない、≪部屋≫。
≪願い≫に隠れた≪本性≫に気付>>続きを読む
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トルーマン・カポーティの同名ノンフィクションノベルの映画化である今作は、同原作、名優フィリップ・シーモア・ホフマン奇演の映画『カポーティ』('05)にも通底する主題を、原作には登場しないとされる人物に>>続きを読む
ホラーは過ぎるとコメディに反転する。恐怖と笑いはコインの表裏とでも言えよう。
そんな、感情のコインが表か裏か定まらない経過の不穏を、ポランスキー映画は演出する。
しかし、今作は安心して笑っていられる。>>続きを読む
もし、目が合っていなかったなら…
ある日出会した偶然を物語で結び、必然とする僕たちは、いつしか未来に運命のときを待ち望むように。
リアリスティックに対するドラマティック。
すべてが伏線ならば、帰結は>>続きを読む
ボーイミーツガール。女の子が宙から降りてきた。受け止める男の子の両腕にかかる重み。グラビティ。
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「権力は脅しでなく統治される者の同意から生まれるべきよ」
バービー人形のそんな訴えが浮かないくらいに、トイ・ストーリーはおもちゃの世界に社会性を持ち込んでいる。
キャラ化された性格やヴィジュアルからオ>>続きを読む
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トイ・ストーリーシリーズは、ピクサースタッフが自身の半生を落とし込むように描くことで、観客の共感を呼ぶことに成功した。
子どもの頃はきっと、子どもとおもちゃとの関係にそれを感じていたが、大人になって観>>続きを読む
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次から次へと、エミリー・ブラウニングはまるで着せ替え人形のように。
ネオアコを中心にオマージュたっぷり、自らの好きなもの、美意識、青春を詰め込んだ、監督デビュー作にして“最高傑作”という評価を下して>>続きを読む
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今作の死神の目的は怨念の類にあらず、和合。死後の世界にユートピアを見るカルト教団の教祖が、集団自殺から一人生き残った元信者である少女を迎えに来る。
事の結末は何らオカルティックな要素のないサスペンスと>>続きを読む