2MOさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ムーンフォール(2021年製作の映画)

3.8

配信スルーもさすがのエメリッヒ節は健在。常軌を逸したディザスター表現に格の違いを見せつけ、臆面もない『インデペンデンス・デイ』の二番煎じがこれまたちょうどいい塩梅の宇宙戦争を盛り上げる。新春、ハルマゲ>>続きを読む

グリーンランドー地球最後の2日間ー(2020年製作の映画)

3.4

他人を蹴落としてまで生き抜く未来にどれほどの価値があるのだろうかと。自ら死に場所を選べる幸福とその美学に映画的ハイライトを見てしまっては、ジェラルド・バトラーの奮闘も虚しく映る。
明日、隕石が落ちて地
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ジオストーム(2017年製作の映画)

3.7

環境問題への警鐘が折しもMAGA批判に繋がる、2017年公開のアメリカ映画。温暖化の臨界点まであと少しの現実を思えば、何ら荒唐無稽とも言い切れないディザスターが迫る。
政治的解決など望み得ない故、科学
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FREAKS フリークス 能力者たち(2018年製作の映画)

3.7

てっきり『ルーム』のような監禁事件ものとして推移していくのかと身構えるも、まったくの思い違い。さながらX-MENシリーズのスピンオフとでも数えられるような、差別や迫害のテーマを下敷きにしたスーパーヒー>>続きを読む

ゴーストバスターズ/アフターライフ(2021年製作の映画)

3.8

天パでメガネのギーク少女に扮するマッケンナ・グレイスちゃんの、まさに“ギフテッド”な才能に魅了されっぱなし。流れっぱなしの劇伴からは、淡い80年代ジュブナイルへの郷愁を思わせる。男女逆転の大胆なアップ>>続きを読む

エアポート・アドベンチャー クリスマス大作戦(2006年製作の映画)

3.2

監督ポール・フェイグのフィルモグラフィーから『フリークス学園』とも通ずる、いわゆるスクールカーストの垣根を越えた友情と共闘の物語にはブレックファスト・クラブの精神が息づく。
Eテレでやってるシットコム
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ホーム・アローン2(1992年製作の映画)

-

ただ貰う側から、施し、与える側への成長の軌跡。連綿と受け継がれるクリスマス精神をその小さな体に体現してみせるは、天才子役マコーレー・カルキン。僕らにとっての郷愁であり、もはやクリスマス映画の古典。

ブラザーサンタ(2007年製作の映画)

3.6

クリスマスプレゼントは何をもらったかということよりも、何かをもらえたという確かな承認がその子の心に慈しみの種をまく。優しくされて優しくできる。人を愛するための愛された記憶。そのことを決して忘れないため>>続きを読む

エレニの帰郷(2008年製作の映画)

4.1

我が心のミューズ、イレーヌ・ジャコブを見つめる先に突として、白い雪景色に広がる映像詩、壮麗な時間の流れに身を委ねる安らぎの感覚が甦る。『トリコロール/赤の愛』にそんな映画を見る根源的な喜びを知って以来>>続きを読む

ペギー・スーの結婚(1986年製作の映画)

3.8

あんな人生もあった、こんな人生もあったという後悔に導かれて、数多の可能性に満ちた青春時代を懐古(タイムトラベル)するのは、過去はおろか現在の自分までをも否定してしまうことに他ならない。今を誇らしく生き>>続きを読む

オンリー・ユー(1994年製作の映画)

3.1

運命とは、いつでも加筆修正可能な自作自演のおとぎ話。おもしろきこともなきこの世をおもしろくする遊び。偶然の点と点を結び、後付けの必然を導き出すことのなんと容易いロマンティックなる永遠の恋、真実の愛。往>>続きを読む

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)

4.1

休日の朝、父の作るフレンチトーストがとびきりおいしかった思い出。多くは語るまい。名作。

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)

3.4

一本のスパイアクションとしては秀作ながらも、本国『ミレニアム』シリーズの硬質な北欧ミステリーは薄れ、フィンチャー版のようなスタイリッシュさにも欠ける。新たなリスベット役にクレア・フォイは健闘も、あのハ>>続きを読む

バンカー・パレス・ホテル(1989年製作の映画)

-

かつての社会主義国家を思わせる街並みに、銃声は鳴り響き、白濁色の酸性雨が降りしきるレトロフューチャー。世界観の構築がとりわけSF映画の至上の価値であるならば、今作のブルーグレーなヴィジュアルイメージを>>続きを読む

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)

3.2

“悪の凡庸さ”を巡る哲学的問いに並行して、ハイデガーとの師弟関係や、激烈な世間の風当たりにも屈しない一人の思想家、一人の人間としての女性像を描くヒューマンドラマはまさしく「理性と情熱の一体」をなす語り>>続きを読む

モリーズ・ゲーム(2017年製作の映画)

2.8

いかにも脚本家の作る伝記映画の情報過多。ひたすらセリフの応酬に依拠する語り口の冗長さを否めない。アーロン・ソーキンのビジュアルセンスを疑う、視覚情報としての映画的快楽の欠如。せめてもの華やかさを一身に>>続きを読む

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)

4.0

童心に抱く優しい世界の嘘を嘘と知って大人になる。物語は終わる、しかし人生は続くその糧となる、信じるにたる愛の証明をフィクションに託す。
そんな映画が好きである。

バーバラと心の巨人(2017年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

死への恐怖、喪失の悲しみ。抱えきれない思春期の情動をメタファーに“心の巨人”を創り上げる少女の成長譚。想像の力は孤独を癒し、過酷な現実を受け入れるべく勇気をも与える。誰もが一人の人生を強く生き抜くため>>続きを読む

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)

3.0

自由への逃走。その無力なる闘争の行き着く先には哀愁漂うロードムービー。ささやかなる社会への抵抗に個人としての人間性を賛美する、ニューシネマの季節。

ブラボー、ヤンキー、バイバイ。

DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)

3.1

スターリン下のソ連全体主義を街ごと、生活者も含めて再現するという前代未聞、狂気のプロジェクト。その一端を膨大なフッテージから映画という芸術体系に収めた、壮大なる実験のほんの序章。

「帰りたい」「ここ
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ホテル・ニューハンプシャー(1984年製作の映画)

3.0

災難に次ぐ災難、それでも生き続けるしかない人生への諦念を“おとぎ話”に謳い上げる。シリアスとユーモアの歪な塩梅はまさに人生の辛酸を味わうかのごとく。妙齢なるジョディ・フォスターの魅惑に酔いしれながら。

世界にひとつのロマンティック(2015年製作の映画)

3.6

ロマコメの皮をかぶった、あって然るべき医療保険法案の一つさえ通せないアメリカ議会への風刺を込めた社会派コメディ。
それでもダンスシーンにNG集のおまけ付きで、ハッピーエンディングはお約束の通り。

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68キル(2017年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

強かなる女の秘密、嘘、涙、あるいは誘惑への服従さえも、男の愛であって然るべき狂気の沙汰を嗤う。自虐。歪んだ女性崇拝にマゾヒズムを充足させるポルノ的な愉悦に浸る。グロテスクかつエロティックな、巻き込まれ>>続きを読む

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女(2014年製作の映画)

3.5

チャドルを纏ったヴァンパイアガールが男を喰らって回るという政治的な意図いかんにかかわらず、対照的にロマンチックなボーイミーツガールの至上の美が、漆黒の闇とまばゆい光のコントラストに映える。モノクローム>>続きを読む

ミッドナイト・ガイズ(2012年製作の映画)

3.7

老境を迎えたジジイの自惚れも、幻想においては許されし美学。ダイナーと娼館とを周回する一夜のロードムービーに、いつまでたっても悪ガキのままの、男のロマンティシズムを垂れ流す。

クリストファー・ウォーケ
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血を吸うカメラ(1960年製作の映画)

3.1

“PEEPING TOM“というタイトルに呼応して、ヒッチコック似の変態紳士が通りすがる“コメディ”。

大事そうに抱えるシネカメラの、その先端に仕込んだ鋭利な刃物に男の性的不能を覗かせる。倒錯的な欲
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まともな男(2015年製作の映画)

3.8

責任逃れの非主体性、その場しのぎの事なかれ主義──自己保身のための“優しい嘘”の、偽善はおろかその加害性をも露わにする、どこまでもアイロニックで冷ややかな視線。事もあろうにそんな嘘がまかり通ってしまう>>続きを読む

ハネムーン(2014年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

新種のボディスナッチャーズ。
そのメタファーは、愛がゆえの喪失への不安。いつか自分の“もの”ではなくなってしまう、ぼくの知らない君へと変わっていってしまう。そんな嫉妬と妄執にかられた狭窄的な愛の不可能
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マングラー(1995年製作の映画)

3.1

スティーヴン・キング×トビー・フーパー。

巨大洗濯工場のスチームパンク感に心躍らせるも、物語は悪魔、生贄、処女の血と、月並みなオカルトモチーフに停滞する。が、ラストに仰天、サービス満点の大仕掛け。モ
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ヘル・レイザー(1987年製作の映画)

3.4

ピンヘッドのヴィジュアルだけですでにトラウマ級のインパクトを誇るが、なんてことはない、思いのほかお茶目な魔道士軍団が微笑ましく、随所にグロテスクも、ホラーとユーモアの表裏一体が緊張と緩和のエンターテイ>>続きを読む

アイム・ノット・シリアルキラー(2016年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

アメリカの寒々とした田舎町を舞台に、少年と老人の交流に心温めるはずのドラマはまさかの狂気を迂回し、愛へとたどり着く。ソシオパス、その殺人衝動との葛藤の末に愛への目覚めを語りうるアクロバット。ざらついた>>続きを読む

隣の影(2017年製作の映画)

3.4

心の疵を埋め合わす邪悪。些細な気の迷いが取り返しのつかない事態を引き起こす。

「根に持つ」とか「影を落とす」といった言語表現にも結びつく一本の木をシンボリックに、北欧はアイスランドとて当然起こりうる
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マンディ 地獄のロード・ウォリアー(2018年製作の映画)

3.2

これはどえらいドラッグムービー。本邦にて合法的にそのトリップなる酩酊感を味わえる上物。甘美で夢幻的な愛の風景から、章を隔て、血みどろバイオレンスのゴアが襲う暴力的なまでのサイケな明滅。ヨハン・ヨハンソ>>続きを読む

カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇(2019年製作の映画)

3.5

ラヴクラフト原作の超常的な世界観に、まばゆい極彩色が映える。グロテスクも良きホラー映画の美しさかな。すべてはニコラス・ケイジの狂気の淵を飾る。

HUNT/餌 ハント・エサ(2016年製作の映画)

2.7

姿形を変えて君臨する“百獣の王”に、親愛さらなる崇拝の念を抱くは飼い慣らされた野生。我々、人類はもはや“ネコ”の御前にまったくの無力を思い知るのである。

ボディ・スナッチャーズ(1993年製作の映画)

3.9

人間に限りなく近い人間ならざるものへの生理的嫌悪。いくら言葉が通じても、決して心の通わない本質的なディスコミュニケーションの恐怖。原作の反共、個の喪失というテーマをより深化、普遍化させる実に4度のリメ>>続きを読む