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オッペンハイマーのmozzerのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.4
まず思ったのは体調がいい時に観に行ってほしい映画。仕事終わりとか疲れてる時はおすすめしません。なぜならこの映画も三時間越えの長編大作だから(笑)

だからといって、面白くないかというと差にあらず、話が進むにつれさすがノーラン監督といえるあの独特の時間列のグチャグチャさで集中力を持続させられながら、所々にオッピーの夢というか妄想描写があったりと伝記物でありながらもエンタメ感も満載。後半では額の広いトニースターク似の男が悪役としての裏の顔を表していくにつれ、まるでオッピーが対立軸としての正義または映画を観てる人にとって応援したくなる存在に変わっていくところはさすがに上手い演出と唸らされた。

オッピーの印象としては、表情が乏しくて感情もあまり出さない男として描かれていたけれど、唯一聴聞会で大声で怒鳴った場面はそれまで耐えていたものが爆発したような演技が素晴らしかった。
しかしオスカー取るほどの演技なのかというとどうかなというのが個人的な感想でした(確かに素晴らしい演技でしたが)。

しかし、一番この映画で観た人の感情を揺さぶった人物はというと、ストローズが聴聞会に送り込んだ難癖つけまくり、全て自分達の都合のいいように解釈する悪辣検事だと思います。この検事のお陰でオッピーがまるでいい人に思えてくるから不思議。毒にはさらに強い毒を使うことで悪く見えなくなるという演出はよくあると言えばそうたけど、観客の気持ちを転換させるテクニックとしてはさすがでした。

最後に、見所は沢山あって素晴らしい作品だと思います。公開までの紆余曲折はありましたが、公開されたことは素直に良かったと思います。観賞後の感想やこの映画に対する思いは、観た人によってそれぞれ違うだろうし、良い悪いという評価もそれぞれだと思います。しかしそれが映画を観るということの本質ではないかと個人的には思っています。
前評判や噂によって変なバイアスがかかってしまわないように、できるだけフラットな気持ちで観れたらなと思います(今の時代難しいことだとは思いますが)。
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