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オッペンハイマーのAkoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1
メキシコ→日本の飛行機でみた。音響とか迫力が桁違いだろうから少し後悔、でも映画館で見てもストーリー自体の印象は変わらなかったと思う。

最初の1時間、ノーランは昨今飽きやすいオーディエンスに魅せる映画を作るのが上手いことを再確認。
音楽、俳優づかい、複雑な断片構成とスピード感。多くは語らずにポンポン進むから置いてかれないように気づかないうちに没頭している(ここで置いてかれる人、興味を失う人はたくさんいると思うけど)
個人的にはどこかのシーンの音楽でめちゃくちゃノーランみを感じた、何だろう沈黙からのズーン感というか、tenetの海のシーンで感じたような。確かめたいからもう一回見る。

正直学問の話はよくわからず、これは私が英語で見たからというのもあるけどネイティブにとってもかなりテクニカルなのでは?
ただパンピにも感覚的にわかるように抽象的/アーティスティックにしてるのが、わかってないけどわかった感、ある種の万能感というか高揚感をくれるからノーランにハマる人が多いのかもしれない。。

オッペンハイマーの人生における科学と政治をバランスよく描いていると思う。私はこの映画を見るまで原爆を作った人のことをよく知らなかったけど、これはどこまで史実に基づいているのかな。。ほんとにこんな人物だったらめちゃ賢いかつカリスマ性あってモテただろうな
Leslyとの掛け合いがすごく好き、お互い会話しながら相手の頭が切れることをわかってリスペクト生まれる感じ、いいよね

Jeanもkitty も賢くてめちゃかっこよかった〜kittyが審問で答えてたcommunistのくだり大好き。オッペンハイマーの50倍くらい肝座ってる。強い女。

総論
長いし後半少ししんどかったけど見てよかったと思える映画だった。
少なくとも日本のことを無碍にしてるとは思わなかった。スクリーンタイムが少なくて重要トピックとして扱われてないことに対する悔しさ?切なさ?物足りなさ?みたいなものは当然日本人としてあるけど、あくまでこれはオッペンハイマーという人物の伝記がメインテーマだから、変えて欲しいとは思わない。

むしろ戦時中の政治情勢、ナショナリズムを理由に自国の勝利に寄与・迎合せざるを得なかった民衆や科学者たちのリアリティがわかってよかったと思う。(というかいまだに親日の人でも原爆が戦争を終わらせるために必要だったと思っているアメリカ人多いと思う、かなり親しい人に面と向かって言われたことある)

いくら犠牲者が出ることがわかっていようと、自分が国のために献身したプロジェクト=原爆が成功したのなら、その瞬間一番湧き上がるのは喜びだというのもリアル。後悔や良心の呵責は後からやってくるものだよね。。

原爆を実際に落とした時の音声ですごく楽しそうにしてたパイロットのことを思い出した。当時それを知った時は小学生ながら人間の心がないやつだったんだなと思ったけど、きっとそんなことはなくて、その瞬間には使命感や達成感やアドレナリンによって見えなくなってた"blood on the hands"がきっと後世彼を苦しめたはず、だと思っている。
戦争を起こしたのは、何千万の人を殺したのは個人ではない。国家という集合体の、その時にはベストに見えたけど、結果的に愚策だと判明した決断。戦争では誰も救われないなと思う。

印象に残っているのが、ハネムーンで旅行した美しい街京都には原爆を落としたくない、っていうダイアログ。かなり自己中でむかっとするけどソフトパワーの重要さもわかる。政治家も極論ただの人間の集まりだし

この映画はオッペンハイマーへの賞賛なのか批判なのか?ずっと考えながら見れたのは、必ずしもロジックだけじゃない心の機微や人間性を、主人公が声と表情とまばたきで語っていたからだと思う、マジで演技がよかった。。
アインシュタインもめちゃ似てた、そうかあの時代は生きてたのか。。歴史の偉人すぎてもっと前の人かと思ってた。
あとKenneth Branaghは皆勤賞お疲れ様です。いつもどこで出てくるのか楽しみにしてます
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