Violet

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版のVioletのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

4K デジタルリマスター版で、2回目の鑑賞。

やっぱりつらい。あの手持ちカメラで揺れるドキュメンタリー調の撮影も不安を煽る手法として功を奏している。
見返すと、セルマの周りは良い人ばかりだったことを思い出した。
キャシーと看守の女性は最高すぎるし
ジェフもいい奴だし。
セルマはキャシーのことを”クヴァルダ”と呼んでいたけれど、これはチェコ語で“幸せ”を意味する言葉とのこと。

監督兼脚本のラース・フォン・トリアーによるもともとのラストシーンは、「ジーンの手術が失敗したと聞き、セルマは絶望状態のまま絞首刑される」というものだったそう。それではいくらなんでも救いがなさすぎると感じたビョークがラストの脚本変更を打診し今の形になったとのこと。ビョークの打診があってよかった。

初めて見た時は、セルマはなんで「彼(ビル)との秘密」とか言って、裁判で本当のことを話さなかったのか理解できなかった。お金目当ての殺人なんてしていないのだときちんと伝えるべきで、それがいちばんジーンのためになるんじゃないのかと。
ジーンは凶悪殺人犯の息子となってしまい、
母が逮捕されてから一度も彼女に会うこともできず、
その上自分の目の手術のために母が命を諦めたことを知ったら、ジーンはどんな想いになるのかセルマはどうして考えなかったのかと。

もちろん2回目見た時も裁判で真実を話して欲しいとは思ったけれど、2回目に見た時は、セルマがチェコからの移民であることについて裁判で何度も言及されていることに気づいた。共産主義国からの移民であることを理由に、彼女は不当に差別されて最悪の判決に至ったのだ。

『ダンサーインザダーク』は単なる鬱映画ではなく、移民差別、障害者が生きにくい社会(健常者のみを視野に入れた雇用や、歩道等の生活環境)、免罪での死刑執行などの問題を人々に意識させる、そんな目的があったのではないか。
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