藻尾井逞育

この夏の先にはの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

この夏の先には(2021年製作の映画)
4.5
「自分の気持ちと向き合えますよう、勇敢になれますよう」
「君を好きならよかった」
「私も同じ、受け入れなきゃね。一方通行の恋もある」
「もしこの瞬間に思いが通じ合えば、"この先"はもう訪れている」

とっさについたウソが招いた思いもよらない事態に。大人への道を歩み出したチェン・チェンとジョン・ユーシンが、厳しい現実に直面しながらきずなを深めてゆく。

中国の高校生の青春も、大人へと踏み出す過程で大学受験や恋愛、さらには自分ではどうすることもできない親の離婚問題まで加わって結構大変ですね。自分の親や先生たち上の世代からは、男らしさとか女の幸せといった昔ながらの価値観を押しつけられたり、結構息が詰まりそうです。そんな中、主演のチェンとユーシンの2人の演技がとても瑞々しくて共感しました。
DJミンを最後まではっきりとは登場させないので、かえってその存在を意識させられます。この映画の原題が「盛夏未来」、同じ監督のBL系映画の傑作「花蓮の夏」の原題が「盛夏光年」なので、ここら辺にもヒントがありますね。でもはっきりさせないことで青春映画としての普遍性を持つことができたようです。ユーシンの一度は拒んだものの、チェンへのキスは、相手の期待には応えられない謝りと、この多感な青春時代をお互い一緒に向き合い乗り越えていくことへの感謝の気持ちからなのかな。チェンもかつて飛び込んでしまった現実という深い水の底から抜け出せたようです。
この映画で最も印象的なシーン、2人で授業中こっそりとAirPodsで音楽を聴く場面、昔はBluetoothとかなかったからコードで繋がれたままで、繋がってる感はあるものの授業中だとバレちゃうよなぁ、と羨ましく思いました。でも台湾出身の知人に言わせると、台湾は高温多湿でよく汗をかくので、他人のAirPodsを自分の耳に入れるなんて信じられないとのことです。台湾ではコンビニでも普通にAirPodsのクリーニングキットが手に入れられるそうです⁈