藻尾井逞育

台北の朝、僕は恋をするの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

台北の朝、僕は恋をする(2009年製作の映画)
4.0
「それで彼女のためにフランス語か。ロマンティックね。彼女もそう思うわよ」
「待つのも悪くないわ!」
「書店では僕がジャマだったかな?」「そんなこと…、いい話し相手だった」

台北に住むカイは恋人がパリに留学したため、書店でフランス語の本を立ち読みする日々を送っている。書店で働くスージーはそんな彼が気になって仕方がない。パリに行きたい一心のカイは地元のボスに借金を頼むが、交換条件でパリに運ぶ怪しげな包みを受け取る。この包みが、危険な大騒動の幕開けだった…。

あらすじだけみると怪しげな運び屋を引き受けたりしてスリルとサスペンスにあふれている感じですが、けっこうユル〜くてカワイイ作品です⁈悪役、脇役にいたるまで、ゆるく憎めないいい味を出しているので、思わずこちらもほっこり、見ていて頬が緩んできます。刑事役のジョセフ・チャンさんなんてヘンテコなカツラをつけたりして、出演しているはずなのに最初誰だかわかりませんでした⁈そしてこの映画の主人公、失恋を絶賛こじらせ中のカイを演じたジャック・ヤオさん、そんなカイが気になって仕方がないスージーを演じたアンバー・クォさん。どこにでもいるような、でも誰も真似できない魅力を二人はみせています。この二人が台北の一夜を走り回るのですが、24時間営業していた誠品書店敦南店をスタートに、士林夜市のような観光夜市とは違い地元の若者がこぞって訪れるデートスポットでもある師大夜市、市民の憩いの場である大安森林公園など、そこには肩肘を張らない、台湾の若者の日常を映した普段の台北の風景が印象的に切り取られています。
スージー役のアンバー・クォさん、相手への想いを秘めてニコニコしながらも、大切な相手のために必死に走り回る、その必死さゆえにとてもキュートで可愛らしいです。こんなカワイイ店員さんがいるんだったら、私なら毎日この書店に通っちゃいます⁈カイくん、座り読みなんかしてる場合じゃないよ!でも調べてみたら、舞台となった誠品書店敦南店さん、2020年5月に閉店。後を引き継いだ信義店さんも新しい店舗形態の誠品生活さんに統合する形で昨年12月24日で閉店になっていますね。日本でも最近、街中の書店が次々と閉店しています。私が学生の頃は、街中の書店は文化、ファッション、流行の情報発信基地でもあり、みんな用はなくてもしょっちゅう書店に立ち寄ったりしていました。あらためて、書店から始まる恋だなんて、うーん、素敵すぎます⁈

2024/04/03
台湾加油!