まーしー

サイレント・ナイトのまーしーのレビュー・感想・評価

サイレント・ナイト(2021年製作の映画)
3.0
毒ガスが世界を覆うクリスマス。知り合いの4組の家族・恋人が集まり、最後の晩餐会を開く。

終末期を描いた作品は多くあるものの、その一夜だけ、しかも一軒の家だけにスポットを当てた作品。
死に対する畏怖など、人間の動物的本能と死生観を描くとともに、過去の秘密を暴露するなど、最後らしい時間の過ごし方も描かれている。

序盤は、全体像が見えにくい進行。
子どもが包丁で指を切って血が滴るホラーテイスト、ワガママ女児をめぐる大人の攻防や夫婦喧嘩を描いたコメディテイストなど、物語の進む方向が見えない。
ただ、徐々に、同じ空間で過ごす登場人物の関係性が崩れていく。特に、「現実から逃避する大人」と「現実を直視する子ども」の対比がおもしろい。
この辺りから、映画のテーマやメッセージが定まったように思う。

同じく終末期を描いた『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』のような壮大さはない。
ある家の一夜をただ描いているだけ。
ワンシチュエーションとも言えるような人間ドラマに重きを置いているところが、本作のみどころだろう。

オチが気になりながらの鑑賞だったが、まさかのラスト。
どのように解釈したら良いのやら……決して気分は良くない。
「現実を直視した者」が正しかったということか。