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ホーンテッドマンションのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

ホーンテッドマンション(2023年製作の映画)
3.5
ニューオーリンズの郊外に建つ古びた洋館へと越してきた母子は、屋敷に棲み憑く亡霊たちに悩まされていた。ひとたび屋敷へと足を踏み入れたら逃れられない恐ろしい呪いに、個性豊かな専門家たちが一丸となって立ち向かう。


◆ When the crypt door creakー

ディズニー創立100周年のメモリアルイヤーに公開されたディズニー・ムービー。生前のWalt Disneyが最後に関わったというアトラクション『ホーンテッドマンション』が豪華なキャストたちによって映像化されました。

Waltはアトラクション構想の段階で逝去されてしまい、彼の死後に同アトラクションは『お化け屋敷なんだから怖く』『ディズニーらしく夢のあるものに』という二つの相反するコンセプトを主張したデザイナーの間で対立があったらしいですが、実際のアトラクションは見事折衷案で決着が着いているように思います。

ゴーストホストと共に、999人のゴーストたちがひしめく洋館を探検するライド型のアトラクション。屋敷に住まう亡霊たちは、ゲストの魂を1,000人目の仲間に迎え入れようと狙っているー。舞台となる洋館はエクステリアもインテリアも意匠が凝らされており、不気味な雰囲気が漂いつつも目を覆いたくなるような凄惨な描写は(エピソードは別として)ありません。骸骨に変貌する肖像画や伸びる部屋。目線で追ってくる絵画や胸像たち。高い映像技術で表現されたゴーストは、要所要所でゲストをしっかり驚かせてくれます。


◆ And the tombstones quakeー

人気アトラクションを実写化するにあたり、現実世界のアトラクションの世界観が見事に映像作品の中へと落とし込まれていたと感じました。建物の外観はアナハイムのパークのそれがモチーフとなっています。アトラクションに登場する『伸びる部屋』『無限に続く廊下』や『撃ち合う兄弟』などの印象的なロケーションやゴーストが登場していました。Jamie Lee Curtisが演じた、アトラクション内でも有名なゴースト《Madame Leota》が物語の鍵を握る重要なキャラクターになっていたのも嬉しい。

今作のメイン・ヴィランには日本のアトラクションではあまり馴染みの無い《Hatbox Ghost》に白羽の矢が立ちました。映像処理がされていてお顔はわからなくなっていましたが、演じていたのはなんとJared Leto。ここでのビッグネーム起用は嬉しいサプライズでした。彼に纏わる裏話や名前は公式なのでしょうか。ついつい某国の元大統領を連想してしまうものでしたが。

ゴーストをテーマにした作品でしたが、多少のジャンプスケアでビックリするシーンはあるものの、決して怖くはなく、アトラクションのスタンスに即した実写化作品として成功していると思います。Danny DeVitoの声がゴリゴリの温水洋一ボイスだった事に対する《ルックスと声の違和感》が、一番怖かったかもしれません。


◆ Grim grinning ghosts come out to socialize

アトラクションをベースにした映像作品を製作にするにあたり、世界観の再現とあわせて重要なのがストーリー。ライド型アトラクションにおいては『999人のゴーストたちが、1,000人目を待っている。』というふんわりとしたテーマだけでも成立しますが、映画となるとそうはいきません。

今作では《呪われた洋館=ホーンテッド・マンション》に関わった個性的なキャラクターたちが皆一様に心の中に何かしらの「つかえ」を持っていました。館でのアドベンチャーを通して「それ」と向き合い、人間的な成長を遂げると共に、かけがえのない仲間と巡り会うことが出来たという王道のストーリーテリング。

加えて、館が如何にして呪われたのか、そのバックストーリーも描かれていました。賛否は別として、子供も楽しめるエンタメ作品に相応しいストーリーだったと思います。


舞台となる洋館が建っていたのはルイジアナ州ニューオーリーンズ。アナハイムのパークで同アトラクションあるエリアが《ニューオーリンズ・スクエア》ですので、公式に寄せた設定といえるのでしょう。《合衆国で最も幽霊の多い都市》という触れ込みの正否はわかりかねますが、同地発祥のジャズ・ミュージック風にアレンジされたテーマ曲はとても洒落ていて好みでした。