アキラナウェイ

ロスト・ドーターのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
4.2
ギリシャの美しいビーチの景観を眺めながら、のんびり静かにバカンスを楽しむ…。

…筈が、随所で主人公の過去がフラッシュバックされ、あれよあれよと物語に惹き込まれてしまう。

ギリシャのとある海辺の町。レダ(オリヴィア・コールマン)が、ビーチでのんびり過ごしていると、賑やかな大家族が彼女の沈黙を破った。子連れの女性ニーナ(ダコタ・ジョンソン)が娘と接する姿を見た瞬間、レダの脳裏に若い頃の暗い記憶が不意に蘇ってくる—— 。

本作が映画監督デビューとなるマギー・ギレンホール。観ている者をどんどん惹き込むのが実に上手い。

あらすじに記述した大家族の喧騒
ホテルの室内の腐った果物
真夜中に目覚めると枕元にセミ
背中に落ちてきた松ぼっくり

静寂を好み、穏やかに過ごしたいレダの個人的な時間と空間を、事ある毎に様々なモノ、人が邪魔をする。

招かれざる客が次々と。

時折、些細な事だがギョッとするショットが挟まれる事で、何とも不穏な空気が絶えず漂う。

そして、母親としての使命を全う出来なかったという悔恨が纏わりつく、レダの過去。

「女王陛下のお気に入り」等、オリヴィア・コールマンの圧倒的な演技力は折り紙付き。内側に秘めた苦悩を少しずつ曝け出し、不安定な心情を見事に体現している。

回想録で若き日のレダを演じたジェシー・バックリーも、オリヴィアと同一人物であると一目で納得させる演技で、無邪気な娘達を育てていく中、精神的に追い込まれていくレダを好演。

劇中、迷子になってしまうニーナの娘や、失くなってしまった人形と、小さな山場でありながら、観ているこちらはその行方が気になって、終始落ち着かない。

テーマは、母性。

その是非についてこの場で語る事は控えるが、巧みな描写ですっかり物語の虜となってしまった。

BON JOVIの"Livin' On A Prayer"で楽しげに踊るオリヴィア・コールマンがお茶目。

そう、お茶目な彼女の登壇スピーチが印象的だった2019年のアカデミー賞。

今年の賞の行方はどの作品に?
受賞式は3月27日。
楽しみだな〜。