BOB

バック・ノールのBOBのレビュー・感想・評価

バック・ノール(2020年製作の映画)
3.5
フランス最大の犯罪多発地区マルセイユ北部(2012)を舞台に、犯罪阻止班"BAC Nord"に所属する3人の刑事の奮闘を描いたフレンチクライムスリラー。

🇫🇷

2012年に起きた警察官による組織的な麻薬違法取引事件を基にした社会派クライムスリラー。『ディヴァイン』『レ・ミゼラブル』『アテナ』系譜の作品で、ご都合主義的な甘さがない。うだつの上がらない警察官三人組の視点から、貧困問題や薬物問題、(政治)警察汚職、怒れる市民たちの姿など、現代フランスが抱える厳しい現実を突き付けられる。もう少し主要キャラの深堀りがなされても良い気もしたが、緊迫感溢れるオープニングのカーチェイスから、警察vsギャングの抗争、予想外の展開を迎える後半まで、興味深く観られた。

一番印象に残ったのは、麻薬組織が牛耳っている貧困層団地の異常な治安の悪さ。よそ者が一歩足を踏み入れようものなら無事に帰れる保証はないといったような殺伐とした空気が充満していた。警察官に対して敵意を剥き出しにした住民たちのパワーも凄まじく、銃を携帯した警官であろうとも、集団に囲まれてしまったら逃げるしかない。警察車両を取り囲まれて、物を投げつけられ、殴られ蹴られ、窓ガラスを割られるシーンは画面越しにでも死の恐怖を感じた。

同じくマルセイユを舞台にした『スティルウォーター』にも、団地に近づいた主人公が集団暴行を受けるシーンがあった。これが現実なのだろう。

警察官の妻を演じたアデル・エグザルコプロス。美しく力強く感情豊か。改めて良い俳優だなあ。

611
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