おりひめ

ある男のおりひめのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

物語 10点
配役 10点
演出 9点
映像 8点
音楽 8点
---合計45点---

難しい作品だった。加害者家族や在日子孫の人権問題と彼らの抱える心の闇に切り込み、観る人自身のアイデンティティにすら訴え掛ける意欲作。そのテーマ故に終始暗い作風で、残酷な場面もある。しかし、戸籍を二回も交換して全く違う人生を生きようとし、最期は事故死した"ある男"と、彼と最後の四年弱を生きた里枝達家族が、傷を抱えながらも報われたのが救いで、後述の通り鑑賞後の余韻は重いが後味は決して悪くない。原誠という男は、林業、即ち木の一生に、己の生を重ねていたのかもしれない。過去に自殺未遂までした彼が、自らに倒れて来る木に恐怖出来て、死に対して恐れることが出来て、良かったと思う。

一方で城戸は、これからどのように生きて行くのだろうか。ある意味で彼もまた"ある男"であり、彼が真実誰であるかなど誰にも分からない……意味深長なラストは、私達自身が相手を何で判断しているのか、本当の「自分」とは何か、誰しも厚さの差こそあれ仮面を被って生きているのではないかと、物語の締め括りに作品全体に係る問題提起として非常に重い余韻を心に残した。

難しい作品を作り、撮り、演じ切った原作者さんや監督さん、役者の皆さんに心から拍手。本年度の日本アカデミー賞にどの部門でも期待が掛かる。

★追記
 予想通り、日本アカデミー賞の各部門を総嘗め!!やはり素晴らしい、日本映画史に残る名作でした!!
おりひめ

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