ひこくろ

巨人の惑星のひこくろのレビュー・感想・評価

巨人の惑星(2021年製作の映画)
4.1
ずいぶんと薄気味悪い映画だなあ、と感じた。

ホンダという男がとにかく気味悪い。
人から借りたマンガを読まずに返しもせず捨てる。
部屋のなかでもコートを着て、外にはほとんど出ない。
ユニットバスをシェルターに改装し、鶏を捌いている。
理由もなく訪ねてきた友人の両手両足を縛り上げ監禁する。

観ていてどうしたって、こいつは精神的にヤバい奴だと感じてしまう。
でも、ホンダは会話ができないわけではない。
普通に受け答えするし、むしろ理路整然と持論を語る。
「夜中に巨人が街に現われる」と。

友人がごくごくまともなだけに、ホンダの異常性が余計に目立つ。
「異常な人」というキャラクターではなく、リアルに異常な感じなのがまた気味悪い。
そして、唐突に迎えるラスト。
巨人の姿を描いたようにも描かなかったようにも見える映像が、今度は映画の薄気味悪さを引き立てる。

BGMに使われているマーラーの交響曲第一番「巨人」第三楽章もこれ以上ないほど合っている。
最初から最後まで、じつに薄気味悪かった。
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