Jun潤

ARGYLLE/アーガイルのJun潤のネタバレレビュー・内容・結末

ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

2024.03.05

『キングスマン』シリーズのマシュー・ヴォーン監督作品。
『キングスマン』シリーズどころか同監督作品をまだ見たことがないので、新鮮な気持ちで今回鑑賞です。

怪しげな雰囲気の店内で相対する色男と妖艶な美女。
男の正体はスパイ、エージェント“アーガイル”。
女性の持つ機密情報を狙い、同僚エージェントと共にギリシャの街を駆けるアーガイル。
しかし、手に入れた情報は、アーガイルの雇い主と、敵対しているはずの女性の雇い主が同じという衝撃の事実だった。
アーガイルは真実を求めてさらなる行動を開始するー、という、エリー・コンウェイによる小説シリーズ『アーガイル』第4巻。
早くも続編が期待され、エリーは執筆に取り掛かるが、母のルースにダメ出しされ、書き直そうとするもなかなかアイデアが浮かばない。
リフレッシュを兼ねて実家に帰省しようと電車に乗り込んだところ、『アーガイル』の大ファンだという男性、エイダン・ワイルドに声をかけられる。
気になったエリーがエイダンに職業を尋ねると、彼はスパイだと答え、その直後、謎の男たちが武器を持ってエリーに襲い掛かる。
状況を理解できないまま、エリーはエイダンと共に電車を脱出し、『アーガイル』第5巻の舞台として構想していたロンドンに連れ出される。
そこでエリーがエイダンから聞かされたのは、『アーガイル』の内容が、実在する秘密組織“ディヴィジョン”の長官、リッターの悪事を暴こうとしている状況とほぼ同じであるという事実だった。
『アーガイル』の次の展開がディヴィジョンの秘密を記録したファイルの隠し場所に繋がると考えたリッターとエイダンが、エリーを狙っていた。
ロンドンでファイルの隠し場所に関するヒントを得たエリーだったが、エイダンのことを信用しきれず、両親にロンドンまで来るよう説得するが、現れた彼女の父親はリッターだった!
果たしてエリーの運命は、そして、隠された衝撃の真実とはー!?

なるほどそういう感じか。
中盤まではちょっと趣向を凝らしているけど普通のスパイアクションもの、中盤以降は本当に普通のスパイアクションもの。
フィクションと現実のオーバーラップや、色とりどりの煙やダンスを取り入れた銃撃シーン、重油の上を滑るスケートアクション、巨大タンカーの甲板での一対一など、見どころもあったにはあったものの個人的にはあまり刺さらず……。
序盤の明らかにフィクションな場面のCG合成が他の場面よりも荒かったのはちょっと笑いました。

序盤の時点で気になっていたのは、小説の中のアーガイルと現実のエリー共に、行動原理や人物の背景が見え辛かったことですね。
最初に語られたのが第4巻の内容ということで、物語の途中であることもある程度仕方ないのかもしれませんが、アーガイルの任務の目的や、アーガイルのエージェントとしての特徴が語られていなかったため、現実とのリンクを感じにくかったです。
また、エリーとしての為人や細かい所作、言動などが、キャラクター造形だけでなく、中盤以降の展開にも繋がっていってほしいのに、中盤まででは本当にただの小説家にしか見えませんでした。
なので急に実は記憶を失った凄腕エージェントだったんですって言われても、腹落ちもし辛いし、唐突な後付けのようにも感じてしまいました。

エリーを演じたブライス・ダラス・ハワードがあんなに動けるとは思ってもいなかったのですが、もしかして彼女の出演作をずっと見てきた人からしたら今作の展開も予想できていたのではと思うと、個人的には悔しさもありますね。笑
サム・ロックウェルが演じたエイダンと、ヘンリー・カヴィルが演じたアーガイルの印象が、観る前と観た後で印象が正反対になるのは面白かったです。

エリー/レイチェルというキャラクターについて考えると、記憶を失う前の自分と記憶を失ってからの自分、どちらか一方ではなく両方合わせて今とこれからの自分というのは、記憶喪失ものにある王道展開の一つだと思うのでこれはこれで良かったと思いました。
しかし彼女の設定にも今作のストーリーにも、どうしても出オチ感があり、3部作を意図しているというシリーズの今後については不安を拭いきれませんね。

ミドルクレジットシーンには『キングスマン』シリーズ出演キャストのカメオ出演があったとのこと。
名称やキャラクターの名前も出てきましたが未視聴側からしたらなんのこっちゃと、鑑賞後もしばらく意図がよくわかりませんでしたが、エリーが脳内で作り出していたアーガイルも、エージェントとして過去にレイチェルと任務を共にしていたから生まれたのかもしれないねという、今作独自の仕掛けだったのかもしれません。
Jun潤

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