回想シーンでご飯3杯いける

手紙と線路と小さな奇跡の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

手紙と線路と小さな奇跡(2021年製作の映画)
4.0
フォローしている皆さんのレビューが軒並み高評価だったので気になっていた作品。確かにこれは良い。

道路が整備されていない山村に、住民自らが私設駅を作るという実話ベースの話らしいのだが、おそらく実話とリンクしているのはその一点だけで、本作の要となる数学の天才少年の初々しい恋物語や、姉や父との触れ合いの部分は、創作なのだろうと思う。そして、その創作部分がとても良いのである。

アーケードゲーム「ハイパーオリンピック」が登場するので、'80年代の話なのだろう。音楽面でも「サニー」と同じ曲が登場する。主人公は高校生で、父親は50才程度だろうか。つまり本作の舞台となる'80年代に高校生だった人達は、現在概ねこの父親と同じ年齢であるはず。その世代にとってはドンピシャな世界観になっている。

何を隠そう、僕自身もその世代なので、本作の主人公と同じように、当時付き合っていたお嬢様っぽいわがままな女の子の事を思い出してしまった。姉はいなかったけど、姉を持つ友人の家に行くのは楽しみだった。同級生とは雰囲気が違う、ちょっとだけ大人な異性。高校生ぐらいだと、精神年齢は女子の方が上で、男子は、周囲の女性にドキドキし、振り回されながら、少しずつ大人になっていくのである。

後半は鉄道の運転手として働く父親のエピソードが浮上。隠されていた謎が明かされ、前半とは違った展開を見せる。派手さはないが、とても心に沁みる作品だ。