マリア・シュラーダー監督のドイツ産SFロマンスドラマ。
ベルリンの博物館で働く女性研究員が、研究資金獲得のため、彼女を喜ばせるために創られたアンドロイドと3週間共同生活を送るという極秘実験に参加する。
「人類は本当にボタン1つで需要を満たしたいのだろうか。実現していない憧れや想像力や果てなき幸福の追求こそが人間の根源ではないのか。」
『She said』繋がりで。
良作。なかなか面白かった。
孤独な現代人と、"完璧に"パーソナライズされたAIロボットによる、男女逆転版『Her』のような哲学的内省的SFロマコメ。AIは人間にとって理想の伴侶となりうるのかを問う近未来映画であり、人間や愛の根源に迫る哲学的なドラマでもあった。
人間が持っていて、AI/アンドロイド/人型ロボットが持っていないものは、本作の主人公の名前であるアルマ(Alma)=ソウル・魂である。
"素晴らしい一晩"を過ごした翌日、アルマがアンドロイドのトムとの関係を冷静に見つめ直すシーンが興味深かった。アンドロイドへの愛を認めることへの疑念や躊躇い、アンドロイドのためを想った行動はただ孤独な自分のための演技に過ぎないのではないかという虚しさ。この複雑な感情にはひどく共感できた。
社会的に自立した現代女性の孤独も本作のテーマの1つだと思う。アルマは、アルツハイマーの父親を介護する中で、自分には人生のパートナーや将来自分を支えてくれる子供がいないことに直面し、独りで老いていくことへの不安を募らせていく。
主演のダン・スティーヴンスが、何度かジェームズ・スチュワートに見えた。
「価値は相対的だ。」
500