キラ

偶然と想像のキラのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.5
こちらで出逢ったレビューで魅かれて。
あと、映画館で上映が終わった時に観客に拍手されている作品とも聞いて。
今年初めて映画館へ足を運んでまいりました。


観に行って良かった。
1番に思った感想としては、この作品を貫いている哲学が私はとても好きだと言うこと。

もちろん、どのお話も「偶然と想像」だなぁというほうの一貫性もありますが、それ以上の、哲学の一貫性。



このオムニバスを構成している3話にはいずれも、1対1で腰を据えて会話している場面がしっかりありましたね。というより、この作品の殆どが1対1での会話。

なので、会話=言葉たちが印象的な作品だとも思ったのですが、敢えて言葉で説明していないところのほうに、世の中をこう捉えているからこれは言葉にしないんだな、言葉にせずこの行動や結果が生まれるんだな、という、言動の前提や理由に、一貫している何かがある、、、と私は感じました。この何かが多分、人生観という意味での、哲学。

どんな哲学?と聞かれると、上手く言えませんが、、、きっとこの監督のかたの、考え方であり、捉え方であり、あるいは美意識とも言えるようなそれが、私は好きだなと直感的に思いました。そしてとても美しいとも感じました。

なんだか難しく書きましたが、一言で表すなら「このひとの思う当たり前が、心地よい」と思った次第でございます。

どんな映画にもきっと哲学はあるはずなのに、この作品に出逢うまでは特に意識して来なかった自分を不思議に思いますが、この作品では会話の内容と人生との繋がりがどれも深くて、かつ言葉の数が多かったからこそ、哲学が浮き出て来やすかったのかなぁなどと考えています。

(※追記: 哲学だと私が観た時に思った何かは作品では語られてはいない、つまり私の「想像」なのだろうと、観終わって監督のかたの言葉をインタビュー記事で読んで気が付き、とてもハッともした、、、けれど確かに監督の哲学も入っているのではないかとも、どうしても思う)



それにしても全3話、どれも良かった。
自分としては1話目が特に好きでした。理由は恋話が好きだから、に尽きます。単純です。このひとはそんな恋愛をしているのね、していたのね、と聞くのが面白くて引き込まれました。しかも最後の決断が(ネタバレはしませんご安心ください。)

2話目では場内に笑いが生まれていて、映画館の良さを改めて感じました。同時にその笑い方などから、この映画の観客が何だか皆とても大人で紳士淑女な方々なのではないかと気が付いたり。
「こういう場面が中盤にあるのも良いと思った」というような台詞を聞いて、この2話目も中盤にあると良い話だったのかもしれないと思ったりもしました。これが真ん中に来るのは、やはりバランスが良いと思います。

印象が最も強烈だったのは、3話目。どうやったらこんな話を思い付けるのでしょうねと、1〜2話目以上に疑問です。
あのお2人がお互いあと10歳、いや、もしかしたら5歳でも若かったりしたら成り立たない話だろうと私には思えて、そう思うと本当にいちいち細かいところまで有り得そうな設定でした。面白かった。こんな日が人生で1日くらいあるとしたら、、それは人生にとってとても豊かなことだろうと思います。


もちろん言葉たちも好きでした。
俳優陣も、それぞれがそれぞれに魅力的。


濃い時間を過ごせたこの作品と出逢えたことに感謝。
そして読んでくださってありがとうございます。
キラ

キラ