アキラナウェイ

ピノキオのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ピノキオ(2022年製作の映画)
3.2
1940年公開のアニメーション作品「ピノキオ」をロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演で実写化。

よく考えたらオリジナルをちゃんと観ていないや。とは言え有名な話なので、要所要所、あれ?という違和感は残る。

時計職人のゼペット(トム・ハンクス)は、幼くして亡くした我が子に似せたあやつり人形ピノキオを作り、「自分の子供になりますように」と星に願う。皆が寝静まった頃、ブルー・フェアリーが現れ、あやつり人形であるピノキオに命が吹き込まれて—— 。

トム・ハンクスの演技は流石の一言で、彼だからこその求心力は確かにある。

CGとして現代に蘇ったピノキオの木の質感や動きもお見事。

ゼペットの家に紛れ込み、ピノキオの良心として語り部の役割を果たすコオロギのジミニー・クリケットも小気味良く動き回る。

でも最初の違和感は、猫のフィガロと金魚のクレオよ。実写化と謳いながら非常にアニメ的なこの2匹を見ていると、「アニメのままで良かったんじゃ?」と思ってしまう。

で、次の違和感はブルーフェアリーが、丸坊主の黒人女性にすり替わっている事。行き過ぎたポリティカル・コレクトネスとして批判の声があるのも頷ける。

学校に行けど、人間の子供じゃないからと拒絶され、人形一座の親方に攫われて監禁され、馬車屋にも攫われてプレジャー・アイランドという子供達が悪業の限りを尽くす怪しい場所に連れて行かれ…。

邪な心と良心。
そんな大人でも難しい両天秤を赤子同然のピノキオが学ぶんだもの。

展開がジェットコースターのように目まぐるしく、人間の悪意にばかり晒されてしまうピノキオが気の毒。もうちょっと、ゼペットとまったりゆったり過ごさせてあげたくなるし、もっと世界の美しさを彼に見せたくなっちゃうなぁ。

嘘をつくと鼻が伸びるという設定もほんの1シーンだけなのね。

軽くツッコんでおくと、ピノキオのバタ足がモーターボート並みに速い。いや、それなら最初にカモメのソフィアに紐を咥えてもらって引っ張ってもらう必要がないじゃないか。そして海の巨大生物モエストロが、小魚やプランクトンレベルのピノキオ達を執拗に追い回す理由がわからない。プレジャー・アイランドの煙のお化けみたいなのは何なのよ。色々と説明不足のまま突っ走って、気付けば終盤。

そして「ありのままで良い」という時代性に合わせて改変されたエンディング。

うーん。

オリジナルを観ていない自分が言うのも何だけど、時代に合わせて、その度にこうやってお伽話をぶっ壊していくのって必要な事なんだろうか。

何かとモヤモヤしたまま終わっちゃったけど、冒頭に映るゼペットの部屋の壁一面の仕掛け時計が、ウッディ、ドナルド、ロジャー・ラビット、眠れる森の美女、ダンボ、ライオンキング、白雪姫と往年のディズニー作品のモチーフだったのは、純粋に素晴らしかった。