ひこくろ

ダーク・センスのひこくろのレビュー・感想・評価

ダーク・センス(2019年製作の映画)
4.4
とんでもない拾い物をしてしまった、という気分になった。

話はサイキック(超能力者)と連続殺人鬼の対決という、かなりぶっ飛んだものなんだけど、それがこれ以上ないくらい見事にエンタメとして料理されている。
上手いのは、主人公のサイキック、サイモンを「見る」以外の超能力を使えない設定にしたところだろう。
周囲の人間はサイモンがサイキック、ということしか知らず、彼の実際の能力を把握できない。
サイモンはその事実を利用して、事を運んでいく。
つまり、はったりと駆け引きだけで事件を解決しようとしていくのだ。

この面白さに加え、さらに元軍人のプレナスとのバディ物としての面白さも加わってくる。
なかなか心を開かないプレナスと徐々に関係性ができてくるのは、観ていて単純に熱い。
特に後半、サイモンが連れ去られて以降は、バディ物として最高だった。

連続殺人鬼を追い詰める、ということを主軸にせずに、超能力研究財団や国家の秘密機関を出してきたのも面白い。
いろんな思惑を持った人たちに、サイモンとプレナスが巻き込まれ、これも知恵と策略(はったりと駆け引き)で乗り越えていく。
超能力は確かに出てくるのだけど、これはもうそれを使ったコン・ゲームのようなものだ。
感覚的には、カイジとかああいうものを観ているのに近い。

繋がりができた人のことが見えるとか、死の瞬間は見るのではなく体感してしまうとかの設定も絶妙。
ここら辺がいい塩梅で、ミステリー的要素も盛り上げる。
あまり説明せずにじっくりと描写を重ねていく脚本・演出も、この映画には非常に合っている。

一見、ゲテモノ作品のように見えるけれど、エンタメとしての質はとても高い。
ぐいぐいと引き込まれ、気がつけば一気に観終わっているような映画だと思う。
ラストの小気味よさもあり、すっきりと気持ちよく楽しめた。
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