のんchan

U・ボート ディレクターズカットののんchanのレビュー・感想・評価

4.2
名作と知ってはいたけど初鑑賞。
CGのない時代、特殊撮影はあれどその映像技術はお見事で全てにおいて観たことないレベル。
これは潜水艦物でTopの傑作でしょうね。


1941年、ナチス占領下にあるフランスの港町。そこには陸で最後の夜を楽しむドイツ軍のUボート『U96』の乗組員たちが楽しんでいた。彼らは特にヒトラーを崇拝するでもなく、愛国主義とも無縁のようだった。ただひたすら戦争に栄光などなく生存あるのみだと解っている男たちだった。

艦長、海軍報道班員(後にこの小説を書いた人物)、機関長、士官、航海長、以下その他の兵士たちは平均19歳の少年のようであり、艦長からは「子供十字軍」と思われていた。総勢43名の乗組員。

艦長は若い乗組員を纏めながら、各自の仕事へ目配り、健康にも気を回す。生死の境目を決める判断をしながらも行き先は母国からの指令で決められる。
潜水艦からの攻撃に成功し湧き立つも、敵の駆逐艦からの反撃に遭い、怪我人が1人出てしまう。
ジブラルタル海峡通過時は致命的な攻撃を受け、海底280mまで沈み、海水が入り込みもうダメかと言う時も団結する力。それは艦長のリーダーシップの賜物だった。

逃げ場のない艦内はむせ返るような熱気、汗、油、食べ物、全ての臭いが充満している。尿を空き缶を持って放尿していたり...今は性別云々の時代じゃないけど、これは正に男の世界でした。そこに女性は一歩たりとも入り込めない。

後半はどんどん俳優たちの鬼気迫る演技にハラハラしていく。
この作品に初演技の人もいた。だからこそ演じている雰囲気じゃないのも良い。無精髭すら英雄の証に見えてくる。

ようやく帰港したというのに...
戦争は容赦ない、感動の場面すら許さない現状をまざまざと見せ付けて終わる不条理なラスト。
それが戦争か?あってはならないと痛感させられる。
観るべき素晴らしい作品でした。



※クリームちゃん、ありがとう
のんchan

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