クリスマスの存在が忘れられてしまった北欧の山間に位置する小さな村。金物屋を営む父と暮らす少女Elise(Miriam Kolstad Strnd)は「12月24日は何か特別な日だったのではないか」という奇妙な感覚を持っていた。
ーWishing you a very merry Christmas!
◆ 初の冬至祭(ユール)ムービー
北欧のホリデームービーに初挑戦。今作はスカンディナヴィア半島の西側に位置するノルウェー産ホリデームービーです。
北欧のクリスマスは冬至祭(ユール)との結び付きが強いようで、クリスマスツリーの飾り付けやツリーを囲むユールボードが印象的でした。また、作中もずっと晴れ間が無く薄暗い雰囲気であった部分にも(北欧の冬は日照時間が極端に短い)ノルディックな雰囲気を感じます。
今作に登場したサンタクロース。赤い帽子に白い髭、ルックスこそ馴染み深いものでしたが、彼のキャラクターには少し違和感がありました。
トナカイは居らず、大工さんと仲良し。木のウロの様な住居で質素な暮らしぶり。優しげな雰囲気はあるものの、包容力や威厳が欠けていて、なんというか《上位存在感》がありません。調べてみると、ノルウェーには《ニッセ》という小さな妖精の伝承があり、土着信仰とキリスト教が混ざりあった《ユーレニッセ》というシンボルが出来上がった様子。見た目は同じサンタクロースでも起源が微妙に異なっている(風俗的なエッセンスが加わっている)が故の違和感だと理解しました。各国のクリスマスの微妙なニュアンスの違いが面白い。
◆ ノルディックな雰囲気の御伽噺
村人全員が忘れっぽく、何を買いに来たのか、今日が休みなのか、寝る場所さえも覚えていないという風変わりな村。なんてカオスな世界でしょう。常人には理解し難い世界観ですが、この不思議な設定をケラケラ楽しまないといけないんだと即座に把握しました。絵本テイストのプロローグ同様、児童向け作品の世界観に浸るべきなのでしょう。
主人公の少女だけが違和感を抱えたまま迎えたクリスマス当日。村から離れた山小屋に暮らしている大工のAndersen(Trond Espen Seim)が、父の金物屋を訪れて慌ただしく大量の食器を購入していきます。彼が去り際に放った『メリークリスマス』の一言。この一言をきっかけに、7-9歳の少女が一人で車を失敬して大工さんに言葉の意味を聞きに向かいます。雪道の運転を女の子一人で。突っ込んだら負けなのです。
彼女の行動力がきっかけとなり、村人全員がクリスマスを忘れてしまっていた理由が明かされます。最後はしっかりハッピーエンド。古い北欧の児童書を基に製作された作品であるため多少のクセはありますが、エキゾチックな風合いを楽しめました。
ーHappy Holidays!