逃げるし恥だし役立たず

ボブという名の猫2 幸せのギフトの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

3.5
ストリート・ミュージシャンからベストセラー作家に転身したジェームズと相棒で茶トラ猫のボブ、彼らが生計を立てるため路上で過ごした、最後のクリスマスを振り返るハートフル・ドラマ(伝記映画)。実話を基に孤独な青年と猫の絆を描いた『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の続編。
ホームレスのストリート・ミュージシャンから一躍ベストセラー作家に転身したジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)と、彼の飼い猫の茶トラ猫ボブ(ボブ本人)は出版社のクリスマスパーティーに出席した帰り、路上演奏の違反で警察官に取り押さえられているホームレスを助ける。ジェームズ・ボーエンは自暴自棄になっている其の若者ベン(ステアン・レース)に、路上で過ごした最後のクリスマスの話を語り出す。それは数年前、ジェームズ・ボーエンはボブと共に路上に立って日銭を稼ぐ日々だったが、其の姿を動物福祉担当職員に目を付けられる。ボブと引き離される不安の中、次々と窮地に見舞われ、ジェームズ・ボーエンは最も困難で苦しい選択を迫られることになる。果たしてボブはいかにしてジェームズ・ボーエンを人生の挫折から再び立ち直らせたのか…
2020年6月15日、ボブは享年14歳(人間に置き換えれば72歳)で轢き逃げにより惜しくも亡くなり、銅像がロンドン北部の公園のベンチに設置されたらしく、残念ながら遺作となる。
続編となる本作はクリスマスに起こったボブとジェームズの実話に基づく物語で、チャールズ・マーティン・スミス監督に代わったせいか、ネコと人間の日常を丁寧に写実した前作に比べて、全体的にストーリーを追い過ぎたかなといった感もあったが、ボブとジェームズの友情物語にクリスマスの奇跡の寓話が、プロット上で有機的に絡み合って、ネコと人間の温かい絆の様に、相変わらず優しさに溢れている。前作の結構重要な役柄で魅力的なキャストは存在自体が無かったように刷新されて、此の手の映画が好きな中華資本により不自然に中国系ヒロインが捻じ込まれている為、前作のあの感動をもう一度!とは素直になれないが、ハンサムなボブのサンタコスの可愛さに悶絶するのは不可避であり、存外ネコの聖誕祭人情噺も悪くない。
女王陛下の親戚の料理番組の先生アラベラ(アンナ・ウィルソン=ジョーン)の登場はストーリーとして流石に出来過ぎだが、慈善団体職員ビー・チャン(クリスティーナ・トンテリ=ヤング)と雑貨店の店主ムーディー・モー(ファルダット・シャーマ)、同僚販売員ミック(ケリン・ジョーンズ)の励ましで、ジェームズ・ボーエンが過去のトラウマから訣別し、自分が価値ある存在であると自信を得て、自立した一人の人間として成長すると云う、ヒューマンドラマとしても面白い。ボブとジェームズが一緒にいるからこそ直面した最大の危機と、英国中を巻き込んだ騒動は、『素晴らしき哉、人生!(1946年)』の如く、広げた風呂敷をきれいに畳んで正に大団円。蛇足もなく、物語は此れ以上ない程にきちんと終わりを迎えている。此れぞ映画の王道であり、老若男女が幸せな気持ちになれるクリスマス映画であろう。
主人公ジェームズ・ボーエンの描写が相変わらずの自分本位で、何を成し得たからハッピーになれたのかとなるとイマイチ釈然としないが、幸運を招く猫ってホントにいて、猫が人を変えるって事もあるんだろうね…
いつもネコに頼りっぱなしだな…ドラえもんかよw