帰ってきたフィヨルド

林檎とポラロイドの帰ってきたフィヨルドのレビュー・感想・評価

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)
4.0
面白いと思ったのが治療の方法。
やはり他人と関わることが人間には必要であって、精神的にも安定したり目的のために協力したり、娯楽を消費して楽しかったりと、人生を幸福にしてくれるのは他人との円滑な関係というのは必要になる。
映画を観たり、ドライブしたり、葬式に一人だとつまらないから誘ったり、余命わずかな病人を看取ったり、他者と繋がることで作中の男性も自分の人生を思い出して、向き合えたと言ってもいいだろう。

作中ではショックな出来事から現実逃避するように記憶喪失が起きていたが、記憶喪失でなくとも、現代では自分が何をしたらいいのか分からないような人も多い。個人のアイデンティティの薄弱化。社会システム、競争社会による没個性化とか、色々と理由はあるだろうけど、自分探しという言葉もあるぐらいだ。(自分は探すものではなくただそこに居る状態の存在が、探している自分そのものだと思うけど。)
そんなことを考えると、他者との繋がりを経て自分が何者だったのか、何者になれるかが見えてくるというのは現実でも同じである。
思ったより社会派な事を考えられる映画だった。