mmm

いつかの君にもわかることのmmmのレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
3.5
幼い時分、“窓拭きの人”に憧れたことがある。外で働けて気持ちよさそうだしキュッキュと磨き上げていく様がカッコよかったから。
大人になった今なら分かる。暑さ寒さに晒されながらの労働は過酷だということ。そして主人公たるジョンの歩みはもっと過酷だ。幼くして施設や里親を転々とし、舐められない為の鎧を纏い、ようやく掴めたはずの平穏も指の間からこぼれ落ちていく。

まだ幼いマイケルのふわふわむちむちした頬、パパのタトゥーを真似た落書き、パパを真似てオモチャのトラックを洗車するシーン、すべてが可愛らしく、ケースワーカーの「どこにいようと、我が子の成長を見逃した。あんな可愛い子に育って」という言葉が真に迫る。きっと恋しかったはず、みたいな綺麗事よりずっと誠実に聞こえた。
それに対して「自分が悪かったんだ」と言えるジョンの潔さも好き。去った母親を単純な悪として描くでもない。人には皆事情がある。

ビール代に工賃、周りの気遣いが有り難くて痛くて泣きたくなる。「それは弱みじゃなく愛というの」という台詞も沁みる。

いつの日かマイケルが読むだろう手紙を束ねるシーン、赤が好きだから赤い封筒なのかな〜と思うとまた泣ける。そこから連なるラストシーン、帽子や衣服からアパートメントの階段まで、まるで生命やたぎる血潮のような「赤」が散りばめられており、これから迎える最期との対比を思わせる。
悲しくて優しくて温かくて哀しい。
mmm

mmm