豚肉丸

夜よ、こんにちはの豚肉丸のレビュー・感想・評価

夜よ、こんにちは(2003年製作の映画)
4.5
イタリアの首相を誘拐して家に監禁するお話

徹底的に主人公の誘拐メンバー側の女性の視点に終始していて凄い。誘拐メンバーは主人公の女性以外にも複数人いるにも関わらず、徹底して主人公からの視点に終始している。だからなのか劇映画的というよりもドキュメント調が強くなっているものの、一面的でないテロ実行犯の物語が描かれていたのが面白かった。
テレビから連日首相誘拐のニュースが流れてくる中で、同じ家の中に首相が監禁されているという不安なシチュエーションが、主人公の女性の視点を介することで効果的に描かれている。女性がドアを開ける/覗き込む動作によって首相が監禁されている部屋へと視点が移り、女性がドアから離れると視点は別の部屋へと移り変わる。女性が仕事に行くと仕事場での様子が映され、家に戻ると家を映した視点に戻る...
物語の都合上、明らかに「一方その頃」と女性から視点を外して首相の方に移したりすることがいくらでもできそうなのに、それを絶対に避けることで、思想と心情の揺らぎが確かに伝わってくるようになっていて良かった。

あとエレベーターの場面が滅茶苦茶凄い。そして「ありえたかもしれない未来」を描き、最後のラスト一瞬にだけ挿入されるあの情景...史実通りのリアリズムを貫きながらもラスト一瞬にあの情景を挿入したことに、映画が持つ力を垣間見た。
面白かった!『夜のロケーション』も期待。
豚肉丸

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