豚肉丸

クイーン・オブ・ダイヤモンドの豚肉丸のレビュー・感想・評価

4.2
カジノで働く女性のお話

シークエンス毎に時間の流れが断ち切られていて凄い。このような映画のストーリーテリングは日常の何でもない瞬間を繋ぎ合わせて彼女の人生を描く...というのが一般的だが、本作は一つ一つのシークエンスを時間的に断絶させることで私達には彼女の人生の断片しか与えられず、決して物語が語られないような構成になっている。行方不明になった夫、DVを受けている隣人、介護をしてる死期間近の老人などの物語を進める役割を果たしそうな要素の数々も、それらは映画内に登場するだけであり何の物語的機能を果たしはしない。開かれたままのシークエンスだけが次々に続いていくような感覚。代わりに映画内を支配しているのは鬱屈とした日常の空気感それだけであり、例え人々の熱量がこもった場所であるカジノであっても、カメラは一歩引いてカジノの建物の中に置かれた小さい存在である彼女が淡々と労働をする様を映し続ける。
興奮などの感情に導かれることもなく、ただ彼女の人生の中から何か出来事が起こる瞬間を乱雑に切り取って並べた(そしてそれらの出来事は解決することもない)ような感覚の映画。ニナ・メンケス監督、一体何なんだ...
豚肉丸

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