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PIG ピッグのsymaxのレビュー・感想・評価

PIG ピッグ(2021年製作の映画)
3.6
"俺の…豚を…返せ…"

人里離れた森の奥深くに、家族同然の豚一匹と暮らすロブ。

トリュフハンターとして生計を立てているもののその風貌は、もはや"世捨て人"…自らの風貌に無頓着なれど、静かで平和な日々を過ごすロブ…

だが、その日は突然訪れる…ロブの大切な豚が何者かに誘拐されてしまう…身も心もボロボロとなったロブは、外界との唯一の接点であり、ロブがトリュフを卸していた新米のバイヤーであるアミールの協力を得て、豚探しの為森から都会へ…

徐々に明らかとなっていく豚誘拐の真相とロブの真実の姿…

ニコラス・ケイジの復活作として、海外の批評家大絶賛の噂を耳にし、是非とも鑑賞せねばと"カリ・コレ"初日に新宿へ…

作品が"ジョン・ウィック"的であるし、売り方もスリラーっぽかったので、"ニコケイ大爆発"な展開を予想して鑑賞していたところ、まことに予想を大きく外れた展開へ…

されど、コレがなかなかの良作でして…ここ数年、借金返済の為に作品を選ばず、観るも無惨な状態であったニコケイが、本来の演技派としての底力を存分に発揮しています。

私個人的には、ニコケイNO.1であった"リーヴィング・ラスベガス"に匹敵する重厚な演技に魅せられます。

暴漢に襲われ、愛する豚を誘拐された翌日、ボロボロとなったロブが弱々しく口笛を吹いて豚を呼ぼうとしますが、上手く口笛が吹けず…のシーンの虚無感の素晴らしさ…作品全体が"愛とその喪失"をテーマとしているかのようで、質の良い短編小説を読んでいるかのような、文学的濃度を私は感じました。

まぁ、ココ最近のニコケイ作品を数多く鑑賞している身としましては、"いつ爆発すんの"という想いは拭いきれず、最後までヒヤヒヤしてはおりましたが…

エンドロールは、途中で立たないでね…私には今作の世界観が詰め込まれているように感じ、どっぷり浸っていたのに…みんな途中で立っちゃうから…もぅ…
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