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セイント・フランシスのjamのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.3
「必要ない」

ブリジットが幾度となく言うその言葉が
おそらく、相手に、ではなく
自分自身に向かって宥めているように聴こえたのは
近頃の私も、仕事やプライベートで
同じように
「必要ない」と言う場面があり、
そう言う自分を意識していたから

人生は選択の連続で
波のように押し寄せるその刻に

惑いながら 時には
それが正しい答えだと自らに言い聞かせて


大学で学んでいた頃は
"詩の才能があった"と意外な場面で評価されたことからもわかるように
ブリジットは"優秀"だったのかもしれない

けれど
34歳の現在
胸を張って言える職業に就いている訳でもなく
愛する伴侶や子どももいない

そんな自分を歯痒く思い、踠き
その一方で
優しい歳下のオトコと"血"をみせる付き合い

恋人も子どもも
"必要ない"
そう嘯いて、気分の赴くままの火遊びも


ナニーとして
一夏を共に過ごすフランシス
彼女のママ、マミー
それぞれの日々

はじめは上手くいかない子どもとの触れ合いが
少しのきっかけで互いの笑顔がほころぶ関係へと変わっていくさま
女性特有の血のくだり、産後うつ、
重くなりがちな場面も
フランシスのくりくりした眼差しと無邪気な振る舞いで軽やかに


必要ない、と切り捨てるのではなく
私にも理由がある、
聞いてくれる?

そう歩み寄れるブリジットの"勇気"が
私の頬を緩ませるころ

夏も終わり。
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