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アウステルリッツの隙間のレビュー・感想・評価

アウステルリッツ(2016年製作の映画)
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ベルリン郊外にあるザクセンハウゼン強制収容所に訪れる観光客の様子をカメラで捉え続けた作品。
収容所の門に書かれた「働けば自由になる」の標語、ナチの反体制派らを隔離する独房棟、遺体を処分する焼却炉。一つ一つを見ながら手持ちのカメラやスマホで撮影する群衆たち。
人権や自由を徹底に蹂躙して破壊した、最悪の大量虐殺の記憶は、観光客たちに継承されているのだろうか。負の遺産はほかの場所と変わらない観光スポットで、人々は思い出作りとして気軽に訪れているようにみえる。
だが、それはロズニツァ作品を見た自分にも跳ね返ってくる。広島平和記念資料館に足を運んだとき、自分もまた群衆の一人だったのではないか。
「働けば自由になる」は、大量のユダヤ人を虐殺する幻想のスローガンだった。一方、人々の労働は経済を急速に発展させて旅行の大衆化を可能にした。その結果、多くの観光客が軽薄な振る舞いで強制収容所を訪れる。この両犠牲は、群衆を単純に非難することの困難さを伴っている。
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