月うさぎ

スイング・ステートの月うさぎのレビュー・感想・評価

スイング・ステート(2020年製作の映画)
3.5
スティーヴ・カレルがまたも、というべきか、今回はというべきか。とても際立ったキャラクターを演じている、ポリティカル・コメディー。
民主党vs共和党の選挙バトルを皮肉たっぷりに笑い飛ばしてくれる。
メディアの無節操で無責任なニュース垂れ流しに対する批判も込められていて、ちゃんと考えられた脚本だった。
「あなたにもわかる選挙の裏の問題点」という教科書としても使えるでしょう。

大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンが共和党のドナルド・トランプにまさかの大敗を喫したショックは大きかった。選挙参謀のゲイリー・ジマー(スティーヴ・カレル)は、スイング・ステート(激戦州)のウィスコンシン州に民主党支持者を広げるべく、寂れた町ディアラケンの町長選挙に民主党から新人候補を立てる事を決断。
小さな選挙にライバル共和党の参謀フェイス・ブルースターが乗り込んできて、個人的なバトルと党の威信をかけた戦いにと、話は全米レベルのニュースになっていく。
選挙にかかる資金も天井知らずとなり、キャンペーンは大統領選挙そのままの様相を呈しだす。
選挙の行方は?

ストーリーよりも、強烈なのはスティーヴ・カレルのキャラクター。
スノッブで上から目線で賢いけれど口の悪い下品な男、でもその自覚もあって芯から腐っている訳でなく、情熱も人への関心も強くて純粋な心も持っている。しかもかなり間抜け。
こんな複雑な人物を演じるなんて、さすがです。

政治資金と利権の問題は米国も日本もあるあるですが、それを娯楽映画のテーマにできるアメリカは日本の数枚上手。
そして、いい思いをしている一部特権階級に一泡吹かせたいという挑戦する心。
諦め、思考停止するよりずっとマシ。

そしてこの背景には「寂れた片田舎の街」というアメリカならではの不平等感がある。
政治家たちは4年に1回だけやってきて、耳障りのいい嘘を語っては去っていく。私たちの街は取り残されて何も変わらないまま。
おいおい、日本人も同じ思いをしていませんか?なのに感じてない人多すぎだろう。

民主主義というけれど、赤が青しか選べないのは本当の民主主義ではないよ。
この映画はそうも言っていると思った。

ディアラケンの街に未来がありますように!

冒頭のクレジットにブラット・ピットがあったのに、どこかに出てた?と思ったらブラット・ピットが製作総指揮だった。
ぶっ飛んでる訳だわ。
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