アキラナウェイ

生きちゃったのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

生きちゃった(2020年製作の映画)
3.5
〜♪ 言いたい事も言えない
    こんな世の中じゃ…
      POISON!! 〜♪

脳内で流れたのは反町隆史。
そんな、言いたい事も言えない男の物語。

妻や娘と平凡な暮らしを送る厚久(仲野太賀)は、ある日会社を早退して帰宅した際に妻である奈津美(大島優子)と見知らぬ男の浮気現場を目撃してしまう。急な事態に、感情を押し殺す厚久。その日を境に妻や友人との関係が狂い始めていく—— 。

愛していても、
その愛を伝えられない男。

愛が欲しくて、
その愛を伝えてほしい女。

そんな彼らをただ見守る男。

冒頭、高校生時代にパピコを分け合った男女3人の友情関係が、そこから生まれた家族関係が、歪み、破綻していく様を生々しく描いている。

パピコを2つ買って分け合ったら、1本余る。奈津美はいつも2本食べちゃうんだそうな。

尺取り虫
蜂の死骸
壁に這うヤモリ

シーンの合間に挟まれる、何気ないショットも印象的。

言いたい事が言えない。
何度も押し殺してきた感情が
はち切れんばかりに膨張して、
弾け、雪崩れ込む。
ラストシーン。
仲野太賀、若葉竜也の演技が凄まじい。

このシーンに全てがある。
2人とも上手いなぁ。

そして、彼らに負けじと大島優子が攻めている。

妻の不貞で離婚したのに、厚久と娘を頑なに会わせようとしない義母の態度は、いくらなんでも筋が通らないでしょう。

そして、そんな屈辱感すら飲み込んでしまう自分を「日本人だからかなぁ」と物事の本質を見ようとしない厚久には、確かに問題がある。

「俺が見ていてやるから」の後の「見ていられない」友人(若葉竜也)の掌返しには、ひっくり返りそうになる。

粗さもあるが、ラストシーンのボルテージの高まり方だけは、ドラゴンボールでスカウターが壊れるぐらいの強度だったので、個人的には嫌いじゃない。