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ほんとうのピノッキオのsymaxのレビュー・感想・評価

ほんとうのピノッキオ(2019年製作の映画)
3.5
サクランボ親方から譲り受けた一本の不思議な丸太…貧しき木工職人ジェペットは、親方から譲り受けたその丸太から一体の人形を作りました。

…"バッポ"…

息をし、言葉を話し出す人形を子供が出来たと喜ぶジェペットは、"ピノッキオ"と名付けます。

ですが、やんちゃなピノッキオは、ジェペットの心配をよそに家を飛び出してしまう…

ピノッキオは、おしゃべりコオロギの忠告を聞かず、果ては妖精との約束も破り、様々なトラブルに見舞われながらも"人間の子供になりたい"との願いを叶える為に旅を続けるのです…


名曲"星に願いを"が印象的なディズニーのアニメ"ピノキオ"が今やスタンダードとなっていましたが、その元となった1883年に出版されたカルロ・コッローディの児童文学"ピノッキオの冒険"をほほ忠実に映像化した"ほんとうの"ピノッキオの物語…

正直者を牢に入れ、嘘つきが釈放や仕事や勉強をサボり遊び呆けた子供達が愚鈍の象徴ロバにされ売られたりと、とても児童向けの作品とは思えぬダーク且つシニカルな風刺がチラホラと見え隠れする一方で、"努力"や"辛抱"そして"勉強"が大嫌いで楽して稼げる事にめっぽう弱い自堕落な人間が真っ当になる道徳的な話でもあります。

ピノッキオは、よく言えば"純真"ですが、単なる甘ったれた悪ガキで人たらし…旅の途中で様々なトラブルに見舞われますが、それは自分で判断した上で決断し行動した結果…悪い方悪い方へと向かってしまうのでタチが悪い。

耳が痛いコオロギの忠告には一切耳を貸さないくせに、キツネとネコの怪しげだけど美味しい話には飛びついてしまう…

何だか何処かで見聞きしたような話ではありますが、100年以上前の作品でありながら、現代にも通じる戒めのように感じてなりません。

ヤン・シュヴァンクマイエルの世界の住民のような様々なキャラクターが登場する中、美しさが際立つターコイズ・ブルーの髪をした妖精がやはり印象深いです。

ジェペットを演じたロベルト・ベリーニを久々に観ましたが、以前、ピノキオを演じ監督もしていたはず?

ジェペットの下を飛び出し、様々な困難を経験した後でピノッキオが選んだのは…ジェペットの下に帰ること…ピノッキオという人形の変化を通し、人として大切な何かに気付かされような気がします。
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