ニコチンロイド

るろうに剣心 最終章 The Beginningのニコチンロイドのレビュー・感想・評価

4.5
ものすごく綺麗に円環が閉じたなと。

思えば10年前。
大好きなるろうに剣心が実写になる!と発表された時、それ以前に僕が夢想していたまんまのキャストがポンポンと配役されて行ったときには、何かの夢を見ているのかと思ったものでした。
2作目、3作目と続いても、神木隆之介の瀬田宗次郎であるとか福山雅治の比古清十郎であるとか、やはり夢を叶えてくれた。

そしてこのThe Beginning、追憶編。
原作でもOVAでも追憶編が一番好きな自分として。およそこれ以上望めない最高のものがお出しされたと感じています。
剣心ではなく緋村抜刀斎としての、佐藤健の演技の凄さ。人を斬ることで壊れている男が、巴と出会って人間らしさを取り戻していくその過程の見事さ。

そして殺陣。
もちろん剣心同様凄まじいスピードでありながら、しかし明確にるろうにの剣心とは異なり命を奪うことに躊躇いがないことをその殺陣すらも演じ分けて表現し、正に「斬る男」に徹して次々と血の雨を降らす抜刀斎。
これは本当に凄まじい。

有村架純の巴というのは最初はミスキャストではないか?と思ったのですが、
巴の無表情なようでいて感情を押し殺している感じをよく表現していて、
土下座したくなるほどに完璧でした。

そして個人的にもう一人、素晴らしいと感じたのが村上虹郎演じる沖田総司。
「燃えよ剣」では岡田以蔵を演じていた彼が、「龍馬伝」で同じ以蔵を演じた佐藤健の抜刀斎と切り結ぶ、正にドリームマッチ。
こちらの沖田君は狂犬のように人を斬り、そしてその天賦の剣を魅せてくれます。
「燃えよ剣」での沖田の描写に(勿論作品性の違いもあれど)物足りなさを感じていた自分は、天然理心流らしい泥臭さを感じさせる殺陣、さらにあの三段突きまで見せてくれるというサービスぶりに感動を覚えました。
個人的には「壬生義士伝」の堺雅人演じる沖田がフェイバリット沖田なんですが、今回やっとそれに匹敵するくらい素晴らしい沖田総司が出てきてくれました。

そして斎藤一。実写版剣心における問題点として「牙突のパッとしなさ」がありましたが、今作では見事な牙突を披露してくれます。
そして史実において、斎藤一というのは沖田総司よりも年下であるわけですが、村上虹郎と江口洋介(30歳差!)が並び立った時に今回は不思議とそこに違和感がなかった。
原作やOVA版にある二面性のある斎藤を廃して、本性である粗暴な面だけを描いてきたことがここに来て良い効果をもたらしてくれたのではないでしょうか。

高橋一生演じる桂の腹の底の読み切れない、しかし剣心を使い潰すことへの罪悪感を抱きながらも表に出さない演技も素晴らしかったし、安藤政信演じる高杉晋作も、いやこの人一本で映画撮ってくれよ!と言いたくなるほど魅力的でした。

うん、大満足です。
素晴らしいシリーズを楽しませていただきました。


あと間違っても星霜編は実写化しないでくれよな!
あれを好きな人を否定するつもりはないしあれはあれで名作なのかもしれませんが(僕には全くそうは思えないのですが)、
あれが剣心の末路だと誤認している人が結構いるのが辛いので。
僕の母も「るろうに剣心というのは最期病気になって死んじゃう可哀想な話だから嫌い」と宣っていたので誤解を解くのに本当に苦労したんですから。

やるなら北海道編を……いやいつ終わるんだろう……。
その頃には今のキャストたちは一体何歳に……?