まぬままおま

ドンテンタウンのまぬままおまのレビュー・感想・評価

ドンテンタウン(2019年製作の映画)
3.6
曇天が街を覆うように、虚構が現実を覆う。

しかしその時述べる現実とは何か。映画で映し出される現実もまた、物語世界としての虚構ではある。それならばソラとトキオが生きる世界のどちらが現実か、はたまたどちらの虚構が現実を覆っているのか分からなくなる。ソラはトキオがいる現実を生きる。けれどトキオがソラという虚構に宛ててテープに日記を吹き込んだ現実を考えることもできる。さらにもしかしたら本作という虚構が私たちの現実を覆っているのかもしてない。このように本作は多層的に雲が立ち込めている。

物語という虚構が受け手の想像力を膨らませ現実を推進させることは、本作で登場する“ある男”の物語から明らかである。
私たちは曇り=虚構が一切ない晴れやかな空を生きるより、雲のある世界を生きるほうがよいはずである。雲は照りつける太陽を隠すことも恵みの雨をもたらすことだってできる。そして何より、後の天気=未来を考えることもできる。