澄夏

ミッドナイトスワンの澄夏のネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「私たちみたいな人間はひとりで生きるしかないの」というナギサの言葉がすごく心に突き刺さって離れない。
自分自身の理解がどれだけ浅はかだったか思い知らされたような気がする。
「人は見た目で性別を判断する」
それって怖いことだし、「オカマ」という言葉が何度か出てきていたけれど、そんな造語もなされているのも怖くて酷くて醜い世の中だと感じた。
性転換手術をして、実家にイチカを迎えに帰った時の実家のみんなの反応が、残念ながら日本の現状なのだと思う。LGBTQの特集とか講習とかをつくり、優しく見ているようでその裏にはきりりと嘲り刺すような眼差しが見えた気がした。
イチカは虐待、ナギサはジェンダーギャップという「何で私なの」と思ってしまうような問題を持っているという共通点がこの映画の象徴的な部分で、その関係性が愛おしく変わっていく姿に涙が止まらなかった。この関係性が構築されていてもなお、本当の母でない。こんなもどかしい関係、他にはないのではないのだろうか...
最後の、イチカが外国のバレエ学校の奨学生になったことをナギサに言った時の「おめでとう」の言い方が、心の繋がりの深さを感じた。
話が前後してしまうが、ナギサがイチカの為に自分の思想に合った仕事を辞めて就職するシーンで、ヘルメットに書く名前を迷っていたのが印象的だった。結局本名を書いていたけど、自分の望む名前を、本望をもっと自由に言い合え、表し合える社会になって欲しい、していくべきだと思った。
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