ハル

辰巳のハルのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
4.2
傑作だと思った。
特に冒頭20分の鬼気迫る感じ…久々に劇場でスクリーンを見るのが怖くなり、不安な気持ちに襲われる。
心へグサグサ突き刺さる魂の込められたシーンの数々に「最後までメンタルは持つだろうか…」そんな、プレッシャーを覚えるほどの“圧”と役者陣の気概。
心臓は終始バクバク。
一時もスクリーンから目の離せぬ没入感、類まれな2時間を味わえたことに感謝の念を抱く。

半グレ、ヤクザの抗争に巻き込まれた一人の男と家族を殺された女の復讐劇。
端的に表すとただそれだけの話。
なのに、とてつもなく面白い。
描写も確かにハードだが、今作の秀逸な点は明確なキャラ設定と演出。

コロナ禍を挟み、再撮影を敢行し、役者によっては9割取り直しを行ったほどの拘り。
より良くするため、より込めるため、出来る限りの限界へ監督も役者もチャレンジしている。
トークショー付き上映だったので、制作秘話を聞く度、「うわぁそこまでやってるんだ…」と脱帽させられた。

そんな中、一番印象に残ったのが、復讐者として生きることを決めた、アオイ。
演じる森田想が桁違いの存在感を示している。
観客を引き込む力強い眼差しと振る舞い。
メンタル的に相当タフな役柄だと思うが、これ以上ないくらい見事にこなす。
人の顔にガムを飛ばしたり、ツバを吐いたりするし、言葉も態度もめちゃくちゃ悪いんだけど、様になってるのが素晴らしい。
恐らくガムやツバのくだりはリアルにやっており、ガチンコで身体を掴んだり投げ飛ばしたりしているので、身体的な消耗も激しいはず。
森田想がアオイとしてそこにいるだけで大部分が成立してしまうインパクト。
凄いモノを見てしまった…

こういう作品がどんどん増えてきたら邦画の未来は明るい。
ノワール系が好きな方は是非劇場へ足を運んでほしい。
「これだけのものを作る力が日本にもあるんだよ!」って、邦画好きなことを誇りたくなる、会心の一作。
ちなみに…劇中では震えるほど極悪人の皆さん、壇上では超がつくほど良い人たちでした。
終始、笑顔の絶えないトークショー(笑)

Special Thanks to〜Shoさん〜
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