みかんぼうや

戦争と女の顔のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
3.5
終始冷たく静かで暗い。戦後ソ連を描いた作品で、戦争は既に終わっているのに、戦争シーンなんて微塵も登場しないのに、ただただ胸が苦しく戦争の酷さを実感させられる作品。

戦争から帰還した2人の女性兵(うち一人は戦争による後遺症を抱える)の戦後の生活を描く本作には「戦争が終わって良かった」という言葉では表現しきれない痛みが描かれる。

子どもを産み育てる喜び。ちょっとお洒落なドレスを着て、好きな人とデートする幸せ。女性として生きる幸せを戦争で失った2人。「戦争が無ければ、全く違うもっと素敵な人生を歩んでいたはずなのに。全てを戦争に奪われてしまった。」そんな言葉を2人は作中では一言も発しないけれど、彼女たちの交わす言葉と表情のやりとりから、そんな思いがヒシヒシと伝わってくる。

映画としては、必ずしも個人的な好みではない一方、そこで伝えたいメッセージと戦後の女性視点からの間接的な語り口は非常に興味深く、凄い作品だと思いました。

この映画が製作されたのは2019年。そのわずか3年後に起こるロシアのウクライナ侵攻。監督はじめ、本作の製作に関わった人々は、今何を思う?
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