プロに女性が入れない世界で、ひとりの女の子がプロを目指す。
という、ある意味、ベタベタなスポ根もの。が、それが魅力的に輝くのは、この映画が現実の残酷さをこれでもかと描いているからだ。
やりたいことを諦め、娘にも現実的になれと迫る母親。
建築士の試験に落ち続け、ついには不正受験をしてしまう父親。
プロになれなかったことで、その厳しさを痛感しているコーチ。
かつてはスインよりも下手だったのに、プロにスカウトされる幼なじみの男の子。
歌手になるためにはダンスが必須と知り、とことんまで練習するが、見た目で落とされてしまう親友。
ここに出てくる誰もが夢と向き合い、夢の残酷さにぶつかっている。
そのなかで、スインは決して夢を諦めようとしない。
やりたいことをやれ、と言うのは簡単だ。でも、実際にやり続けることはあまりにも厳しい。
現実は誰も彼もの夢を決して叶えてくれない。
むしろ、夢が叶わないことのほうが、当たり前なのだろう。
その現実をこれでもかと示したうえで、夢を叶えようと必死になるスインを描くことで、この映画はとんでもない輝きを放っているのだと思う。
ただただ、夢を叶えるスポ根ものではなく、現実と折り合いをつけながら、それでも夢を叶えようとする。
その姿は、あまりにもリアルだし、だからこそ胸を打つ。
夢と現実の両方をしっかり描いたことが、この映画最大の魅力だと感じた。
タイトルやポスターや予告編やあらすじ、あるいは人気俳優の主演作だからという理由で観ないでいる人には絶対におススメしたい。
同じ理由で映画館で観なかった僕が、心の底から後悔しているのだから。