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台湾、街かどの人形劇のjamのレビュー・感想・評価

台湾、街かどの人形劇(2018年製作の映画)
3.6
「赤い小箱」が見守る芸能

布袋戯…台湾の民間芸能、リアル指人形のような感じなのだけれど、最近では虚淵玄の"Thunderbolt Fantasy"で日本でも知る人も増えていて。
私も、その略して"サンファン"を観て興味を持った一人

その布袋戯の人間国宝、陳錫煌
父の人間国宝、李天禄
父が婿養子だった故に
長男である錫煌は母の姓を継ぎ
李姓を継がなかった故に
師匠である父との間に生まれた蟠り

親父、弟と話をしたことがない

自分が自分になるには父を殺すしかない

父と弟に先立たれ、自ら齢80を超えてなお布袋戯の継承に奔走する


かつては生活の延長だった布袋戯
ところが50年代には、反共抗露の道具とされ
現代では観客の減少、後継者問題を抱えて

誰にでも教える、熱意があれば
との言葉通り、フランス人女性ルーシーまでもが教えを受ける

多くの人に観てもらうために、現代風にアレンジされ…星の王子様?なかなかシュール…

一番弟子、二番弟子…
父から受け継いだ「赤い小箱」のなかの田部元帥人形に祈りを捧げる
この小箱の継承者となるのは…
弟子たちの語る心境や布袋戯を巡る状況を愁うても
錫煌の思惑を汲み取るのも難しく


ドキュメンタリーの終盤
台湾語でなければ味が出ない、けれど言葉がわからなくともその魅力を感じられる作品を、と
実際の演目をじっくり魅せる

師匠、錫煌が命を宿す人形の繊細な動き
垂れ幕の隙間から見える一番弟子の活き活きとした表情…

さらには
人形を取り去った錫煌自身の手の動き
シミだらけの老人の手が
まるで生きている人の動きそのもので


赤い小箱の行方
布袋戯のこれからを想う…
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