Habby中野

水と砂糖のようにのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

水と砂糖のように(2016年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリー、というにはすこし不思議な映画で、追われる事実よりも象徴的な記号に囲まれている。
一見何の映画かわからないが最後に渦をとくタイトルや、色とりどりの花々、市電や“散歩”により目に映るローマやニューヨークの街並み。それは数々の関係者インタビューのある種の的を射なさ、具体性のなさとおなじく記号の意味としてではなく、細部でもなく、意味としてカルロ・デュ・パルマの映画の本質を浮かび上がらせる。彼のテクニックではなく、語られた言葉や作品や映るもの、この映画のあり方によって語ることを体現する、それはなによりも真実を伝える。語られることをつなぐのではなく、周囲をつむいで物語を語ること。それは「散歩するごとに一本の映画が撮れる」と言うデュパルマの精神に通ずる。なんだかその空間性が心地良くて、わずかに映る海辺の景色と、黒くゆるいダブルのジャケットに青いシャツの襟を片方だけ出し、同色のバンダナを首に巻いたヴィム・ヴェンダースの佇まいにさえ、陶酔の感がある。
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