Habby中野さんの映画レビュー・感想・評価

Habby中野

Habby中野

MY HOMETOWN(2022年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

技術は美か。信じられないくらい完璧な画面。カメラが、編集が、背景が、演技が、光が、音が、世界のすべてに映画の形を与えている。
団地という半建築半世界の中から取り出された生活と人生、あるいは時間は、その
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NIMIC/ニミック(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

劇的なものと生活感、角度や距離によってそれらがまるでドリフのコントみたいに目まぐるしく替わっていく導入から、人の存在そのものが他者と入れ替わっていく核心への無機質でシームレスな転換。そしてその入れ替わ>>続きを読む

名探偵コナン 時計じかけの摩天楼(1997年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

ずっとコナンでいつ映画始まるんかなおもたらずっとコナンやった。あまりに安易な脚本(さすがに新キャラ一人しかおらんかったら100人が100人そいつが犯人てわかる)にたどたどしいアニメーション。父と子がテ>>続きを読む

パルコ フィクション(2002年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

おいおいパカテンポかよ!見たことのないリズムで進む映画の、この間延びした隙間はいまどこへ行ってしまったのだろう。ビルの隙間とかから、ひょこっと出てきてくれたらうれしい。

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

たとえば、信号のない交差点に出る時、一時停止して左右を確認すること。一度通り過ぎかけてから少し戻るような思考と身体のラグ。登場人物によって撮影されているカメラに決して同化せず、あくまでその後ろから映画>>続きを読む

3人のアンヌ(2012年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ホン・サンスの到達点的作品。メタフィクションが、同じ人物、同じ場所で並列的に描かれる。捉え方としてはマルチバース。しかしそこに”明確な違い”はなくまた”明確な同一性”ももちろんない。メタフィクションだ>>続きを読む

百万ドルの明星 陽気な天国(1955年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

名のある作曲家に見出されはるばる上京したらそいつは偽物で話は白紙、お情けのオーディションを受けたら一緒に来た妹が合格しスターになる。夜の歓楽街でトボトボと流しを続ける歌手の男。友人の女が勢いで歌うとそ>>続きを読む

新感染 ファイナル・エクスプレス(2016年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

KTX内でのゾンビパニック……発想はおもしろいけど映画的にはダメ(と感じた。個人の感想だょ)。これはたぶん上手さの裏返しなんだろうけど、導入が丁寧すぎて冒頭から冷めっぱなし。どう複雑におもしろくわかり>>続きを読む

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト(2023年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

黒沢ともよの演技と声質、その真骨頂。
これまで群像の凝固に弾き出されていたような位置から、そのまま前に立つ久美子。群像の中に置くには少し異質なように感じていたそのくぐもった、透明とは言いがたい質の彼女
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トランスポーター(2002年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

”全て”じゃん。冒頭のお手本でしかないアクション編集からの自宅での緩やかさ、しかし油断は決して許さない(なぜ許されないのだろうか)突然の爆撃、そしてそれらを全て忘れさせるような後半のシチュエーションア>>続きを読む

名探偵コナン ベイカー街の亡霊(2002年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

徹底的なまでの「血縁」への意識に恐れ入った。ただ政治的な問題提起かと思えばそうではなく、その血の連鎖に呪いも、信頼も愛も乗せること、もっと言えばその血の流れない人工頭脳の自壊までもを描くことは、この上>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

間違って入った会場で美しい演奏を目にした時のような浮ついた心持ちのまま、『ゴッドランド』と同じあのカメラワークにタイトルが浮かび上がって大声で(小声で)叫んだ。緩やかでどこか噛み合わないセッションへの>>続きを読む

恋をするより得をしろ(1961年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

マッドマックスくらいデカいダンプがきれいな団地にドンと出る。両津と寅さんと他いろいろを混ぜたみたいな小沢昭一のキャラを前面に出したコメディっぽいけれど、実は複雑な作りをしている。恋より得だと嘯く”ゲス>>続きを読む

グッバイ、ドン・グリーズ!(2022年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

既視感に次ぐ既視感は、心の原風景……なんてものではなくてただ焼き回し的な弱いストーリーによるもの。あまりに現象的で、台詞過多で、平面的なアニメ。でも世界の広さを知ること─打ち上げ花火、上から見ること─>>続きを読む

14歳の栞(2021年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

リアルと作為の、あるいは人間とカメラの、見られる側と見る側の、切実なバトル。そしてそこで起こるハレーション。カメラに向かって、身構えながらも自らの言葉で、それを発する際の逡巡さえ屈託なく表出する子ども>>続きを読む

劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~(2019年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

アニメ一気見した時も感じたけどユーフォシリーズの、群像劇には止まらないレイヤーの多さ(絵のではなく)とそのレベルの深さ、一人一人の存在とその自立への尊厳の眼差しは半端じゃなくすごい。「で、自分らどうす>>続きを読む

LUCY/ルーシー(2014年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

サイエンススーパーヒーローサイキックアクションギャングスピサイコアシッドギャグ漫画。あくまで科学的見地にアシッドと少しの夢を混ぜただけ、という自然なスタンスなのに、過剰な描写とそれに融和するギャグシー>>続きを読む

劇場版 再会長江(2024年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

まさしく旅であり、まさしくドキュメンタリーである。それはカメラが振り回される撮影機材としてでも驕りのある神の目としてでもなく、その場への参加者としてある屈託のなさと、冷静さを保った的確な構成や語りの織>>続きを読む

ハイティーンやくざ(1962年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

建設される街。人々の住む家屋を横切るトラックは幾度となくリフレインされる。そしてその内の一台に轢かれて人が死ぬ。土ぼこり舞う乾燥した世界が、赤切れのように傷つけられていく。水分の飛んだ混沌。
大人たち
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クチビルのはしっこ(2024年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

ループの極地への追究、標題としてはとても良い。ループしてるのは世界ではなく自分なのであり、それを抜け切るきっかけは「始まり」、つまりループする自分自身の存在にある。もうそれ以上にないくらいに、人生を嘯>>続きを読む

お嬢さんの散歩道(1960年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

前のシーンのリアクションを次のシーンの頭で受けたり、プールに飛び込むアクションから競馬のスタートにつながったり(あれこれなんかハリウッド映画で見たことあるぞ……)、とにかく気持ちの良いテンポ。新米女中>>続きを読む

この日々が凪いだら(2021年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

「(後ろの卓で醜くはしゃぐグループを横目で見ながら)ああいう人生よりよかったとおもう?」
「あれよりは絶対ましです」
「でもさあ こんな仕事何年続けてても人生変わんねえぞ なんでましだとおもう?」
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ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

まるで(まるで?)古びたフィルム上映のように画面に走るノイズ。しかしそれは映画内の時代に合わせた演出ではない。カメラは、物語から逸れて宙を舞い、時を先回りしあるいは後に戻り、雨水にレンズを濡らし、旅の>>続きを読む

ダ・ヴィンチ・コード(2006年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

ミステリー・サスペンスとしてはあまり好きではない作り。まるで(まあ実際そうなのだろうけど)、設定と結末が先にあってただ逆算して物語を逆さに作った、物語が転倒したまま起き上がれないような脆弱さだった。「>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の描写、世界で最も完璧で美しいシーン。校舎前の階段に座り込むしぐれ。足を伸ばす一瞬の予備動作。俯きながら誰かを待つ。来た!と思えば別の人。しばらく待つと、ついにのぞみはやってくる。長い首を少し前に>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

異常だと思った。それはすべての時間と事象に対してではなく、おおよそ映画の三分の二ほどの時間の中の、驚くほど非人情な対象への距離感と機械的な編集の速度について。これはひとりの人間のストーリーなのだと、そ>>続きを読む

山河ノスタルジア(2015年製作の映画)

4.2

メモ

時間がすべてを変えるわけじゃない。
と、時間の目線。

ゴーストバスターズ(1984年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

せっかくのナイスアイデアな設定をぶち壊してしまうほどの人間主義がかえって潔い。でもそういうところやぞとも思う。デッド・ドント・ダイの時ビルマーレイどう思ってたんや?

べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

アンチリアリズムによるリアルの、言い換えれば空想による眼前の世界─に押し潰されそうな人間の肯定。いわゆるオタク的な逃避でも中二病的転嫁でもパラノイア的混乱でもなく、しかしファンタジーでもない、いやある>>続きを読む

あした来る人(1955年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

愚かで、迷い、過ちを犯す、狭く短い世界を生きる人間。そんな人間が一度来た道を戻ることを、別の道を歩むことを許す優しさのようなもの。愚かさへの自覚と皮肉に、少しばかりの愛があるのは、川島雄三の本音だろう>>続きを読む

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

めっちゃくちゃ楽しくて(もちろん酔っていたから)泣いてしまった。これまでマリオが積み重ねてきたものを作り変えるなんて大仰なことはせず、あくまで解釈の深化と拡大、その丁寧でスパイシーな創造に作品から作品>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画が終わってふらつく足で、パンフレット買おうと思ったら売店が閉まってて、まだ21時半なのに、シャットダウン、という感じがして思わず席を立ちそうになった。もうロビーにいるのに。
ボーは恐れている。何を
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

間延びした時間、しかしそれには進行方向がある。どんよりとした景色は、時間にさらされてゆっくりと侵食されていく。「酸化」と言うよりは「錆びつく」ほうがロマンティック?
進むしかない者と進むことのできない
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

一目見てすべてが分かるようなもの。そんなものが眼の前にあるならば、「学問」も「解剖」も必要ないだろう。誤訳とズレ。それが謎の正体だ。「裁く」と「捌く」が日本語で同音なのも。
見えていることは、見えてい
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