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アフター・ヤンのsymaxのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
3.8
"彼は人間になりたかったのか?"

"いかにも人間っぽい質問ね…"

人型AIロボットが家族の一員となっている近未来…

ある日、ヤンが動かなくなった…

何とか修理しようとしていたジェイクは、ヤンの体内に一日数秒間だけ撮影できるチップが埋め込まれ、膨大な量の動画が保存されたメモリがある事を知る…

それはまるで銀河系宇宙の様なヤンの記憶…残された映像に映るのは、何の変哲もない日常…でも、とてつもなく愛おしい日々…やがて、ジェイクはヤンのある秘密を知ることに…

"RRR"というとてつもなく熱い英雄譚を鑑賞直後にチョイスした本作は、小津安二郎的SF…"動"の"RRR"に対し"静"な本作。

坂本龍一の刹那系旋律に眠ってしまうのではないかと一抹の不安を抱きつつ鑑賞…

ところが、自分でもびっくりなのですが、ストーリーが進んで行く内に"ポロリ"と涙が…

AIロボットのヤンが記録していた動画には、何の説明もなく、穏やかな日常が残されているだけなのに、そこにロボットが抱くはずのない愛情が確かに見えてきまして、その美しさと愛おしさに心が揺れてしまったのです。

単純に人間やロボットのアイデンティティを描いているのではないと感じさせます。

残された家族の喪失と再生の物語の様で、SFという設定を借りた多様性についての話の様で…
中々奥が深い…

ロボットが残した記憶を見る事で残された家族は自分自身の人生を深く見つめ直す事になるのですが、映画を観ている観客も自身の人生を深く掘り下げていくように感じたのです。

だから、ヤンの記憶に私も自分の人生を見つめ直し涙したのでは?…と思ってしまう…

もう一捻りあるのではと思わせながら、訪れる突然の終わりに逆に深い余韻を感じさせられました。
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