ひこくろ

ブラック校則のひこくろのレビュー・感想・評価

ブラック校則(2019年製作の映画)
4.1
とにかく脚本が上手いのひと言に尽きる。

観る前までは、厳しい学校側に対して主人公をはじめ生徒たちが立ち向かう話か、理不尽な校則をコミカルに描いて見せる諷刺のような話だろう、と思っていた。
が、脚本は「学校対生徒」という図式を安易には持ってこないし、ことさら校則にスポットを当てることもしない。

主人公二人が校則を変えようと奮闘する話こそメインだが、同じくらいの割合いで、彼らの周りのさまざまな人たちの行動が描かれる。
その多くは悪意や毒に満ちていて、下手をすれば一気に暗くなってしまうような内容だ。
それが、テンポよくユーモアに溢れた台詞によって緩和されている。

まるで群像劇のように描かれるじつに多くの人たちの行動は、校則に絡んだものばかりではない。
何も関係のないような話や、学校での出来事など、人が多い分、話も多様だ。
主人公たちの動きも遅々として進まない。
これはどうするんだ、と思わせてからの、すべてを伏線として回収してみせるクライマックスが、また上手い。

なんでもなかったような描写までもがクライマックスで収束するのを見て、映画のここまでのすべてが伏線だったと気づかされる。
その無駄のなさと、畳みかけの巧みさ。

脚本家は「セトウツミ」などの作品で知られる漫画家の此元和津也。
テレビアニメ「オッドタクシー」でかつてないほどの見事な完成度を見せた手腕は、この映画にも存分に生かされている。
というか、手法はほぼ「オッドタクシー」そのもの。
こちらの映画のほうが前なので、ここからあの完成度に至ったのだろう。

しかし、ドラマと連動したりしたわりには、あまり話題にならなかったような記憶がある。
やっぱり、日テレ製作でジャニーズのタレントさんが主演というのが、ファン以外を取り込めなかった要因なんだろうか。
わからなくもない。でも、食わず嫌いをするには、惜しい作品だった。
ひこくろ

ひこくろ