YukiBan

WinnyのYukiBanのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
4.5
「この世の果てにひろゆきを置いてきた」でおもしろい人だと思った東出さんが出てるので観た。
ただただIT技術が好きでこの世をよくしたい不器用な金子勇を完璧に演じていて凄みがあった。やはりその人の社会的評価と芸術性は分けて考えるべき。

著作権損害幇助のために逮捕・起訴された天才技術者の実話をもとにした作品。
いや〜、警察権力のちっぽけさ、くだらなさが浮き彫りになって面白かった!

無料で動画や音声をダウンロードできるソフトウェアサービスWinnyを開発し、著作権侵害を人々が行うのを助長させた容疑で金子勇は逮捕されるが、原告が著作権侵害を訴えた映画会社や音楽会社とかではなく警察であるのがこの事件の奇妙なところ。
同時期に警察は裏金問題で揺れていてその発覚を恐れていた。WinnyはP2Pと呼ばれる、ダウンロード者やアップロード者が特定できない匿名性を担保するシステムを搭載していた。
つまり、警察の捜査資金など割り当てられた予算が全然違う使い道になっている領収書などが警察内部の人によって匿名でWinny経由でアップロードされるのを警察は恐れていたのだ。
そうなる前にWinny開発者を逮捕し、世間にWinnyは危険というイメージを持たせ、Winnyの使用禁止に持ち込んだのだ。
結果として、裏金問題はWinnyによって明るみになり、警察は目的を果たせなかった。

くだらない隠蔽によって、1人の天才技術者の時間と名誉が奪われたわけだ。最高裁で金子勇は無罪となった(この判決により日本のIT開発者は利用者の悪用の罪が自分に降りかかることはなくなった)が、裁判期間の7,8年、彼はPCをいじることが法的に許されなかった。
チェンジメーカーとなりえた彼を長年無効化し日本の発展を妨げた警察の罪は途方もなく重い。
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