にしやん

見えない目撃者のにしやんのレビュー・感想・評価

見えない目撃者(2019年製作の映画)
3.9
2011年に公開された韓国映画のリメイク。ちなみに中国版もあるみたいや。次から次へと関係者に当たっていくうちに惨たらしい事件の犯人が次第に浮き上がり、最後は主人公との直接対決となる、いかにも正統派のクライム・サスペンス・スリラーやわ。

主人公を盲目にすることで、映画にオリジナリティが加えるつもりやろけど、案外盲目設定がサスペンス装置として働くんは映画の終盤の方だけで、それまでは割り合い普通の犯人捜査もんミステリーやな。そやけど、なんぼ普通やとは言うても、そこは韓国ノワールのリメイクやさかい、地道な捜査をお通して社会の暗部を適度に告発しつつも、人間の再生がありいの、軽いユーモアがありいとなかなかええバランスやわ。

意外にこの映画の特徴は「ゴア表現」やねん。R15なんも多分このせいやろ。こんな酷い死体損傷が出てくる邦画は結構珍しいんとちゃうか?残忍な殺され方をした被害者を全く遠慮なく見せつけてくるわ。ネタバレなるからぼやかして書くけど、物凄い惨たらしいことをやるシーンなんかを容赦なくドアップで撮ったりしとうしな。これだけでもテレビ地上波では無理やろな。その辺りの劇場用映画としての覚悟というか割り切りについては大変好感が持てんな。

シナリオや演出についてやけど、とにかく抑制をするところでちゃんと抑制を効かせてるんは作戦勝や。吉岡里帆の盲人設定を過度に強調せえへん盲人演出並びに演技が成功してんな。スマホカメラとか点字ブロックを使った盲人ならではの演出かて、ちょっと無理あるんちゃうとか思いつつも、これくらいはセーフやろ。それに、恋愛要素がいっこも無いんもええ。終始映画全体に重苦しさがキープされてる。他には、失踪女子高生の悲惨にし過ぎたりせえへんとことか、そいつ等の親とか出て来うへんかったり、シリアルキラーの凶器をあえて強調せえへんとことかもな。それと、シリアルキラーのあの死んだような目もなかなかええ感じやし、あとは、腹の中がいまいち読めへんねんけど、徐々に心境が変わっていく刑事役の田口トモロヲやとか、大人への不信感全開の高杉真宙なんかも良かったんとちゃうかな。

犯人については、ストーリーの展開を待たんでも、見てりゃ何となく絞れてくるし、カンのええ人やったら分かるんとちゃうかな。分かってからの見せ場の作り方がかなり強引というか無理があるというか引っ張り過ぎな感じもしたけど、最後は伏線の回収をキレイにやれてたさかい、まあええとしょ。せやけど、シリアルキラーかてそれまでは、容赦なくいきなりズバズバやんのに、最後の最後は能書き垂れて勿体ぶってモタモタするんって、万国共通の映画界のルールなんかいな。あらためて思たわ。

別に取り立てて傑作やと名作やとかっちゅう訳やないけど、今の日本映画にはこれくらいちゃんとやれてる普通におもろいサスペンスもんがなかなかないさかい、結構観る価値高いんとちゃうかな。静寂を使た演出が効いてるさかい、映画館で是非観てほしいもんやわ。
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