なるほど、「地下室はもう満員」ってか。なるほどなるほど。「逃走」の夜の、無数の階段とトンネルとがすべてを物語っているじゃないか。なるほどなるほど、こんなに遠いのか、まったく泣けるじゃないか。でも、すごいナイーブな、中学校の学級委員みたいな感想というのは重々承知で、それでも一応、馬鹿のようにつぶやかせてもらうなら、気になったのは「この映画を絶賛して一体全体どうなるのだろう」ってことだ。割と、普通に、本気の感想。一体全体、この映画を絶賛して世界はどうなるっていうんだろう。
いやはや、確かに、ポップ・カルチャーの批評理論(???)みたいなものにかぶれていた時であればね、真似して書いたと思うよ、「いやー、やっぱり、問題提起だよポップ・カルチャーはさ」みたいなね、「イシューを突き付けるまでだよね、知的な作家はさ」とかね。でもって、それを込々で、「いやー、鋭いね。同時代的だし普通に面白いしね。エンタメだね」とでも言ってポップコーンを頬張っていればなんとなく今のコードを押さえた振る舞いになるのだろうね。おそらくね。だって、例えば現実の世界でSNSに「地下室」の不条理を暴露して誰かに助けを求めることは、空き家の電球を使ってモールス信号を打つに等しい行為なのだろうから。救いなんて、ない。
でも、で、それをみんなで絶賛して、映画賞を与えて、映画オタクの集うレビューサイトで「いやー、今回も最高でしたよ先生」なんて盛り上がって、一体全体どうするんだろう、それで。これを「普通に面白い」エンタメ映画として割り切れるほど俺はハイテンションな人間ではない。